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「生憎だけどさ? ザイ兄ちゃん、クラル兄ちゃん達と同じ四天王と守護者とはいえ、オレとレイ姉ちゃんは兄ちゃん達みたく和解はしてないからね。そこんとこヨロシク」 「よく言うわよ。結局殺さずに引き渡したらしいくせに」  魔王が直属の配下として使役する、四人の魔の血をひく者。それがかつての「四天王」だが、それは守護者に匹敵する力を持ち、宝珠を狙う化け物だった。  元々四天王は、この世界の四方にかなり旧くから城を構え、監獄を司っている。罪を犯した人間や化け物を分け隔てなく捕らえる役割を担う。  しかし魔王が現れた時には、魔の者としてその命に従わなければならない。普段は世界の治安維持に貢献する彼らは、魔王が消え、その呪縛から解放された後、静かな生活に戻れていた。  そうして大人しくしていた北の四天王たる女を、つい先日に青年は、今の上司――魔王の残党を名乗る勢力に捕らえさせた。少女が聞いたのはそうした事の顛末だった。今後、この青年が現れるなら、その時は警戒するようにと言われて。 「そりゃレイ姉ちゃん、オレが殺すこともなく死んでたし。あれを生きてるとみなすのは、どうかと思うけどな」 「まだ死んでないってザイは言ってたけど? 医者なんだから、その見立てはアンタより確かでしょ」  少女は実際、その女に面識はない。女の元同僚――南の四天王だった男が、その時に青年と刃を交わしただけだ。 「ジョーダン。それこそザイ兄ちゃんの希望的観測だってば。まず間違いなく、レイ姉ちゃんは寿命だったよ」  この先、女が目を覚ます見込みが無いことを青年は知っていた。それでも抵抗した南の四天王とは本気で交戦したらしい。花の御所の公家に裏切りを告げる前に、既に南の旧い仲間に背を向けていたのだった。 「そこの『銀色』君と一緒さ。命がなくなれば、体が無事でも死んじゃうんだよ。普通は確かに、そうそうないことだけどね」 「……」  一通り、少女の気が済むまで様子を窺っていた少年に、青年が改めて視線を戻す。少女と少年を両方視界に収める。
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