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「それで――何でアンタは、ここに来たわけ?」  冷静に少女は、少年と青年の間で青年に対峙する。 「コイツが(キラ)になってるってことは、どーせロクな事情じゃないんでしょーけど」  またも呆れるように息をついた。茜色の髪の少女も、普段は弱小で穏やかな金色の髪の少年が、銀色の髪へ変貌する時があることを知っている。  何かで戦う力が必要な時に現れる、血も涙も無い死神。そんな「銀色」のことを、数少ない顔合わせの中でも目にしていた。  青年はあっさりと、少女達の前に現れた理由を明かす。 「うん。オレは今度は、水華とユーオン君に来てほしいのさ」 「――は? あたしとコイツ?」  少女はそこで、心から意外そうに目を丸くしていた。 「水華もソール君、覚えてるだろ? あの時の水華みたいに、今やオレも、ソール君の人形状態ってわけ」 「……!」  その青年と少女が、東の大陸で初めて出会った事変に纏わる、ある固有名詞。それはどうやら、少女には黒歴史らしい。瞬時に苦い目つきをした少女から少年は悟る。 「何、あいつ――……またあたしのこと、お姉ちゃん人形にでもしようとしてるわけ?」  少年は全く(あずか)り知ることのない、その東の大陸での事変。  本来、瑠璃色の髪の妹分と旅を始めたはずの少女は当初、妹分を足手まといだとジパング近海に置き去りにしたという。そして一人で足を踏み入れた東の大陸で、気ままに立ち寄ったある村で――  天使のような人形が大量に飾られている教会へ、偶然に足を踏み入れた後から、茜色の髪の少女の受難は始まっていた。 「近いけど、ちょっと違うかな? とにかくソール君の意向もあって、水華とユーオン君を連れてくるよう、可哀相な人形のオレは命令されちゃったのでした」  本当に作り物である人形を、呪われた方法で動かすだけではない。その人形使いは、生きた者をも人形とし操るのだと、事も無げに青年は口にする。
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