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「どう? オレと一緒にくる? 水華」 「誰が。コイツも嫌だから銀になってるんでしょ?」  ひたすら黙り、場を窺う銀色の髪の少年に、茜色の髪の少女は納得した目を向ける。その頭の回転はいつもとても速い。 「そー言うと思ったけどね。それならやっぱり、力ずくかな?」 「あのねぇ。仮にもこの家――あたし達のホームで、アンタが守護者だろーが、二対一で勝てると思ってんの?」  きらりと少女は、両手の腕輪を一瞬で両手の平に引っ掛ける。 「コイツは銀の時は文句なく強いし。ラピのことほっぽって、アンタと行くはずもないし」 「……そうかな? 事情を知れば、案外そうでもないかもよ?」  少女の手元で、腕輪が一瞬強い光を発した後に、二つの腕輪が細い魔法杖となった。先端にそれぞれ白と黒の、真円にも近い小さな三日月型の刃を誂えるメイスへと変化していた。  両手に一つずつ、クレスントと呼ぶ魔法杖を構える少女。そうした戦闘態勢に、少年も隣で無言で剣を構える。 「確かに水華が魔法で、『銀色』君に剣で来られたら、オレも一人じゃきついけどね」  その二人の少年と少女――あまりに自然に前へ出る少年と、少年の斜め後ろで白三日月の方の杖をブンと掲げる少女の連携。  戦闘センスが似通っているのか、言葉も無く共闘できてしまう者達に、何故か青年は妙に微笑ましげだった。 「お前達って……何か、息の合った兄弟みたいだね」  普段の金色の髪の少年はともかく、「銀色」の実力は少女も認めている。だからこその連携だろう。 「でも――……」  そこで青年は、青白い月明かりの中で、確かにニヤリと――  青年が本来属する魔性の牙を、口元に鋭くたたえて微笑んだ。 「それならオレも、血が繋がってるだけだけど……オレと同じ吸血鬼の姉ちゃんに、助けに来てもらおーかな?」  次の瞬間には、その暗い瓦の屋根の上に、新たな敵が降り立っていた。  守護者たる青銀の髪の吸血鬼に比べ、あまりに弱小な吸血姫のため、少年も少女もその気配を脅威と捉えていなかった。  敵として認めていなかった相手。それが唐突にこの場に加わる。 「……え……?」 「って、へっ?」  そして少年と少女は同時に、その相手の意外過ぎる驚異に、茫然とした声を漏らすこととなる。
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