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 場に突然、間延びした鳥の鳴き声のような妙な音が響いた。 「――!」 「って――げっ、ラピの奴!?」  少年と少女が揃って驚きの顔を浮かべる屋根の下。結界の内である縁側に現れた瑠璃色の髪の妹分が、常に首に下げる、猫の頭に似た形の奇怪な笛を取り上げていた。  青白い月を無言で見上げながら、妹分は丁寧にその音を奏でる。 「やめてよ、あんたがそれ使うといつもロクなことないー!」  その笛の力――妹分の家に伝わる「奇跡」に、少女が一瞬で青ざめていた。  あららー……と。次の瞬間、場に起きていた異変に、青年は目を丸くした。 「こりゃー……マズイかな?」 「――!」  突如として現れた青く巨大な人影。それが青年と吸血姫を両方、むんずと掴む。その姿に少女が、完全に放心して怯えるようにずざざと後ずさった。 「おっ……おフクロー!!?」  隣で呆気にとられる少年からも、それはどう見ても養父母の里帰り先にいた、青い女性の巨大版に見えた。 「ナシ、それナシ、それでなくてもバケモンなのに巨大化とか反則ー! って本人じゃないけど、それでもその姿は反則ー!」 「ホントだねー。これじゃオレ達、戦えないねぇ」  どんな抵抗も通じない、巨大な人影に掴まれて青年達は、身動きがとれない様子だった。どうやらこのまま遠くに連れていかれると悟っていた。 「『見えて触れる幻』……それだけの奇跡を呼ぶ力も、意外に使い勝手、良さそうだよね?」  瑠璃色の髪の娘と出会って間もなく、青年はその不思議な実態を知ったらしい、奇跡の笛の力。縁側から月を見上げる瑠璃色の髪の娘を、人影の手の中から見下ろして笑った。 「ラピちゃんには負けたなぁ。それじゃ――」  そして青年は、少年と少女にひらひらと楽しげに手を振る。 「また来るね、水華、ユーオン君。次は戦力総動員で来るから、覚悟しててよ?」 「――!」  巨人に連れ去られるという情けない姿でありながら、あくまで不敵な顔でそう言い残す。最後まで黙りこくった吸血姫と共に、青年は去っていたのだった。
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