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ひょっとして、と、妹分は、更に少女のことも巻き込みに入る。
「水華のそっくりさんも、水華のおかーさんとかおねーちゃんだったりして?」
「有り得ないし。吸血鬼に知り合いなんていないし、あたし」
「わかんないよ? だってそのヒト、ザイさんと同じ、元々は四天王さんだって言うじゃない。ザイさんみたいに人間の血も流れてるのかも?」
「尚更論外だし。あたしは聖と魔の混血だって、おフクロ達は言ってた気がするし」
人間の血はほとんど流れていないと、茜色の髪の少女は否定する。二つの魔法杖を渡された理由は、聖魔二つの「力」のためだと、少女はそう伝えられていた。
「生粋の天のヒトのクラルさんからも、あたしの羽は自分とほぼ同じだって言われたしね」
「あー。たまに出る水華の変な、光でできたみたいなアレ?」
「変とかアレとか言うなっつーの。ま、どう考えても吸血鬼の羽は無いから、吸血鬼の身内なんてお呼びじゃないのよ」
本来は自身の真の両親――ルーツを探し、少女は旅に出たはずだった。しかし南の地で宝珠や守護者という存在を知ってからは、興味はほとんどそちらに移っていた。
「万能の宝珠なんて、聖魔併せ持った万能のあたしにまさにぴったりじゃない」
その背に刻まれた光が持った、聖なる力を扱う白い杖と、躯体本来の魔の力を受ける、黒い杖が必要である少女。
「……オレは……気は進まないけど」
分けられなければいけなかった事情。併存できる理由。
この道の先でそれを少女が突き付けられると、少年はまだ知らない。
その歪な少女のことを、妖しい占い師の元に連れていくのを躊躇ったのは、少年だけではなかった。
「大丈夫かな。水華、この間までちょっとおかしかったから」
「――へ?」
家を出る直前に瑠璃色の髪の妹分は、ふと思い出したように、茜色の髪の少女の後ろ姿を見て呟いていた。
「私と水華、ここに帰る前に南にいた時――一カ月だけ学校に通わせてもらったんだけど」
南にいる守護者の三人の子供。それらが通う学び舎へ、体験入学として少女達は混ぜてもらったらしい。
「そこでの水華の通り名、何だと思う? 竜牙水華――それは淑やかな微笑みの美少女……『紅の天使』だよ?」
「それは確かにおかしいな、有り得ないな」
でしょ? と少年を見る妹分は、いつもの軽さに蔭りがあった。実際にその通り名がしっくり来てしまう変貌を、しばらくの間遂げた少女の姿を見ていたのだ。
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