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「今はすっかり元通りだけど……その代わりに、宝珠宝珠って、そればっかり言うようになっちゃったし。守護者とかそういう危なそうなこと、あんまり関わってほしくないんだけどなぁ」 「そーだな。別にこないだのことがなくても、どの道そっち方面、自分から関わってたっぽいしな」  うんうん、と頷き合う、基本的に弱小な養子の兄妹だった。 「ユーオンには『銀色』さんがいるからいいけど、私は本当、さすがについていけなくなりそうだなぁ」 「そうか? オレも大概、ついていけてないよ」  妹分も奇跡の笛を持っているが、それが使えるのは月夜の下、子供の間だけということらしい。結局弱い人間に過ぎない妹分は、常に何処か、自身が異端だと控えめにしている。養父母や友人達のような優しい千族に囲まれていても、己との差異を感じているようだった。 「もうそろそろ、おとーさん達も家を出て半年が過ぎそうなのに。帰ってこれないってことは、『ディアルス』に本拠を移す日も近いのかもしれないね」 「……いつかはそうなるかもって、そういえば言ってたな」  「西の大陸」にある大国で、身元不明の化け物でありながら戸籍をもらっていた養父母は、その国の王族と知り合いだった。王族の依頼で様々な地に出向く中、七年前にこの瑠璃色の髪の娘――六歳で両親を失い、二年近く養家を転々としてきた西の大陸出身の孤児と出会い、養女としていた。 「私はジパングが好きだし、くーちゃん達もいるからここにいたいけど。水華は南が気に入ったみたいだし、結局みんな、いつかは私が届かない所へ行っちゃいそーだよね?」  いつも笑顔を絶やすことのない妹分は、家の戸締りをしながら淋しいことを言う。そうした時も必ず、穏やかにニコニコとしていた。 「そうかな。オレは多分――ずっとここにいるよ」  その危うげな明るさを持った相手に、少年はただそれだけ……祈るように細やかな笑顔で、当たり前の約束を口にしていた。  少年が茜色の髪の少女に、占い師の存在を教えなかったのは、 ――オレの仕事は、ラピスのいるこの家の番人だろ。  この妹分が何より、友達がいる土地での、養父母の帰りを待つ三人での生活を喜んでいること。それが大きかった。 
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