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 近道の竹林を先々と進む茜色の髪の少女の後方で、少年と妹分はしみじみと会話を再開する。 「ユーオンもジパング気に入った? と言っても他はそんなに知らないと思うけど」  昨春に養父母に拾われ、それ以前の記憶の無い少年は、養父母と短い旅をした時以外はずっとジパングにいた。 「ジパングっていいヒト多いでしょ? 鶫ちゃん達なんて特にそうだしね」 「そうなのかな。何となくここの時間、他の大陸よりゆっくりな気はするけど」 「そうだよー。だってユーオン、強くならなきゃってずーっと一杯一杯だったのに、今はそれ程でもなくなってる感じ。それ絶対、鶫ちゃん達と一緒にいたおかげだよ~」  首を傾げる少年には、その自覚は少なかった。 「ラピスがジパングにいるなら、オレもジパングにいるよ」 「えぇー。じゃあ私が西に帰るって言ったら、ついてくるの?」 「ラピスが嫌でなければ。いないよりはマシな護衛だと思うし」  この妹分を可能な限り守ること。それを硬く定め、他要因に関わらない自らの居場所としていた少年だった。 「でもそれ、鶫ちゃんとか残念がると思うよ?」 「――? 何で?」  少年が花の御所にいた頃のことを、妹分は友人達から聞いているらしい。 「ツグミは強いし、周りの奴らも強いし。オレがいると返って面倒かけるだろ」 「えぇー。ユーオンそれ、本気で言ってるの?」  いつも笑顔の妹分は、こうした時は、露骨に不服な顔も少年にはよく見せた。 「ユーオンは御所での生活、楽しくなかったの? っていうか楽しかったでしょ?」 「……あんまりそういうの、考えたことないけど」  コラコラ、と。妹分は瞬時に強い笑顔を見せる。 「それが一番大事なとこだってば? 私や鶫ちゃんがどうとかじゃなくって、ユーオン自身が何処にいたいか、何をしたいか――ヒトの責任にしないで、自分でちゃんと考えなきゃ」 「……ぐう。今何か凄く、痛いことを言われた気がする」  ここまで突付けられると、何かと曖昧な少年も形を得るしかない。そういう意味でこの核心を探したがるリアリストな妹分は、少年には毒薬手前の良薬と言えた。 「それならオレは……ラピスのそばが、いいんだと思うけど」 「うーん……わかってたけど、わかんないなー。何でユーオン、いつもそんなに私のこと心配してくれてるの?」  そこまではさすがに、さあ? と少年も答えるしかなかった。
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