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 一番最初の作戦会議で。その少年と少女を狙う敵は、少なくとも五人はいると、狙われた側は把握していた。 「今日来た黒のバカ守護者と、あの外道な吸血姫と。アンタが言うには、花の御所にも仲間が一人潜り込んでたんだって?」 「ああ。戦闘能力は無さそうだけど、ヨリヤ達の中にも仲間にできる奴がいないか探してたみたいだ」  金色の髪の少年が把握する敵はその三人だ。茜色の髪の少女は更に、少女が既に出会っていた敵を加える。 「あたしが見たのは、個々の強さはまちまちだけど、とにかく動く天使人形が大量なのよ。それを操ってるのはただの小さな子供なんだけど、そいつの守り役みたいな神父が一人、そばについてるのよね」 「へぇー。東の大陸……私がやっと水華を見つける前、そんな荒事があったんだねぇ」  茜色の髪の少女がその事変に巻き込まれた時、瑠璃色の髪の妹分は少女にジパング近海に置き去りにされた後だった。その後に執念の一人旅で少女を見つけたというが、結果的には最も危険だった事変に、そのおかげで巻き込まれずに済んでいた。 「じゃあ、兵士としての人形は無数で、無力な幹部は操り手の子供と、御所の偵察者の女と二人。戦える幹部はあの守護者とその神父の二人ってことでいいのか?」 「あくまで少なくとも、ね。後、あたしにすれば虫けらだけど、アンタには十分脅威の吸血姫を忘れてるわよ」 「……――」  声を呑む少年に、少女は冷静な視線を向ける。 「銀なら勝てるだろうけど、アイツもあまり動けないんでしょ? あたし一人で止められる範囲は、神父と人形使いを何とかして、人形達もそれで無力化できるかどうかってとこ」 「そっかぁ。それだと後は、御所にいたっていう女のヒトとアラス君と、水華のそっくりさんがまだ残っちゃうね」 「……ミズカ。それは……」  そうなると、残った敵の相手は誰ができるのか。その吸血姫が現れた後、何故か早々に退場した「銀色」に期待できることは少ないだろうと、少女はあっさり見切っていた。 「無理よ。あのバカ吸血鬼、仮にも守護者だから。宝珠を使われたらあたし達にはそもそも勝ち目ないし」 「……」 「魔王の残党相手とか、迂闊に他人も巻き込めないし。レイアス達が帰るまで、ここで籠城が最善でしょ。それも結局、実家に連れて帰られるだけだと思うけど……。どうしても外に出ないといけない時は、出会えば逃げる! それしかないわよ」
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