4人が本棚に入れています
本棚に追加
「……オレはそんなの――……何の意味も、ないと思ってる」
……その繋がりは、とっくに少年は知っていた。
養父に拾われたその時から、隠し子という根の無い縁でなく――もっと重い何かに気が付いていた。
「……ユーオン?」
少しだけ憂いをのせて、少年を見る妹分の深い青の目。そこには机に置いた両腕を重ねて目を伏せる、誰も知らない少年が映る。
「生まれ変わりがあってもなくても。ヒトは死んだら、みんないなくなるだろ」
「……?」
「たとえ誰かの生まれ変わりでも……もうそいつは、その前の誰かじゃないんだから」
淡々と、誰の目も見ず、俯いたままで無表情に少年は続ける。
「誰かには大切だったことも、思い出も未練も。次のそいつには関係ないし……そいつがそれを思い出すなら、今度はそいつが消えるだけだろ」
「……なるほどね。ま――それが妥当だわ」
だからこそ、茜色の髪の少女を待っていたという占い師は、自意識の連続性に拘っていた。
その少女を待ちたいと願う己を変えずに維持するために、転生を拒否し、妖となる道を選んだのだろう。
「あたしはあたしの意志で宝珠がほしいし。前世がどうとか、今のあたしが知らないことの責任まではとれないし」
「……」
冷静に頷く少女。しかし少年は、何処か澱みのある紫の目を躊躇いがちに向ける。
「まぁでも、ラピの言う通り、都合がいいのも確かだけどね?」
「……ミズカ」
「どーせ宝珠を狙うなら、そこに縁があるなら使うだけだし。あの占い師が案内するって言うなら、あたしは乗っかるわ」
「…………」
知らず、少年と妹分は黙って顔を見合わせる。どちらの顔にも同じように、微かな当惑が浮かんだ状態だった。
「それじゃあ水華……梅おばあちゃんと一緒に伊勢に行くの?」
「そこに行かないと、『地』に行く方法わからないんじゃない? あいつが封じた記憶の媒介があるって言うし、多少は遠いけど、行ってみるしかないかな」
ジパングに存在する聖地らしい、伊勢という山間地。明朝から少女はそこに出向くと言う話だった。
「……罠ってことはないよね?」
「あのね。そもそも梅ってあんた、てかおフクロ達の知り合いでしょ?」
「でも――途中で襲われたらどうするんだ?」
安全な結界の家から遠く離れる。その危険性が少年も妹分も、大きく顔を曇らせる理由だった。
「逃げるしかないでしょ。最初からそれは変わらないし」
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!