11/18
前へ
/425ページ
次へ
「……オレはそんなの――……何の意味も、ないと思ってる」  ……その繋がりは、とっくに少年は知っていた。  養父に拾われたその時から、隠し子という根の無い縁でなく――もっと重い何かに気が付いていた。 「……ユーオン?」  少しだけ憂いをのせて、少年を見る妹分の深い青の目。そこには机に置いた両腕を重ねて目を伏せる、誰も知らない少年が映る。 「生まれ変わりがあってもなくても。ヒトは死んだら、みんないなくなるだろ」 「……?」 「たとえ誰かの生まれ変わりでも……もうそいつは、その前の誰かじゃないんだから」  淡々と、誰の目も見ず、俯いたままで無表情に少年は続ける。 「誰かには大切だったことも、思い出も未練も。次のそいつには関係ないし……そいつがそれを思い出すなら、今度はそいつが消えるだけだろ」 「……なるほどね。ま――それが妥当だわ」  だからこそ、茜色の髪の少女を待っていたという占い師は、自意識の連続性に拘っていた。  その少女を待ちたいと願う己を変えずに維持するために、転生を拒否し、妖となる道を選んだのだろう。 「あたしはあたしの意志で宝珠がほしいし。前世がどうとか、今のあたしが知らないことの責任まではとれないし」 「……」  冷静に頷く少女。しかし少年は、何処か澱みのある紫の目を躊躇いがちに向ける。 「まぁでも、ラピの言う通り、都合がいいのも確かだけどね?」 「……ミズカ」 「どーせ宝珠を狙うなら、そこに縁があるなら使うだけだし。あの占い師が案内するって言うなら、あたしは乗っかるわ」 「…………」  知らず、少年と妹分は黙って顔を見合わせる。どちらの顔にも同じように、微かな当惑が浮かんだ状態だった。 「それじゃあ水華……梅おばあちゃんと一緒に伊勢に行くの?」 「そこに行かないと、『地』に行く方法わからないんじゃない? あいつが封じた記憶の媒介があるって言うし、多少は遠いけど、行ってみるしかないかな」  ジパングに存在する聖地らしい、伊勢という山間地。明朝から少女はそこに出向くと言う話だった。 「……罠ってことはないよね?」 「あのね。そもそも梅ってあんた、てかおフクロ達の知り合いでしょ?」 「でも――途中で襲われたらどうするんだ?」  安全な結界の家から遠く離れる。その危険性が少年も妹分も、大きく顔を曇らせる理由だった。 「逃げるしかないでしょ。最初からそれは変わらないし」 「…………」
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加