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そこでもう一度、少年と妹分はぴったりのタイミングで顔を見合わせ――互いに思わず、困ったように笑っていた。
それというのも。
「そっかぁ。それなら私もついてっちゃおうかな」
「――は?」
「ミズカ一人じゃ、何となく危なっかしいしな」
はい!? と少女が焦るのを承知で、同じ結論に至った少年と妹分だった。
「あんたらねぇ、足手まといってわかってんの!?」
「だって梅おばあちゃんもいるんだよ? どの道そんな無茶な道の行き方しちゃダメだよ、水華」
「いざとなったら、梅を見捨てて逃げそうだよな。梅は梅で、それで本望とか言いかねないしさ」
ぐ――と。少年の指摘が全く図星の少女は言葉に詰まる。
「……それが危険でも、ラピスはミズカと一緒の方がいいだろ」
だからこれまで、道中を共にしてきたのだろう。あはは、と否定しない妹分に、少年は困ったように笑う。
「それに何か……ミズカを一人で放ってたらいけない気がする」
弱小な自身が、足手まといになる可能性は十分にわかっている。それでも占い師のことを教えた時から、しばらく少女から目を離してはいけない、その思いも、理由のわからないまま確固として存在していた。
「ったく――好きにしなさいよ。でも言っとくけど、あたしはあんたらのことも、何かあれば容赦なく見捨てるわよ」
既に妹分をジパング近海に置き去りにした前科のある少女は、悪びれもなく言うのだった。
「ああ。そうでないとオレも困るし」
そして何故か、そんな少女こそ頼もしく、少年は穏やかに笑いかける。
誰に対しても、少年は本来、負担になることを極度に恐れる。その少年が唯一、何故か背中を預けられるのが、この茜色の髪の少女だった。
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