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翌朝早くに、金色の髪の少年達がその家を後にする前に、思っても見ない者達が突然訪ねてきていた。
「へ……ツグミ、何で?」
「あれー。どーしたのくーちゃん、うちまで来るなんて?」
少年が世話になった御所の、剣の師の娘で守護者の姪である赤い髪の娘。同い年で仲良し組の、ジパングらしからぬ恰好で帽子が似合う友人。それらが連れ立って朝から現れる珍しい事態。
妹分は首を傾げながら、嬉しそうに彼らを庭に招き入れる。
「ごめんねラピちゃん、ひょっとして取り込み中だった?」
出かける準備万端の妹分に、帽子の友人は気が付いたようだった。
「ううん、今日からまた留守にするから。その前に会えて良かったよー」
「そーなんだ! 危なかった、来て良かったよ」
「?」
首を傾げる妹分の前で、赤い髪の娘が、妹分と少年に難しい顔を向ける。
「……何処かに行くの? ユーオンもラピも」
「ああ。ちょっと梅と一緒に遠出してくる」
淡々と返しつつ、知らず剣に手をかけた少年に、赤い髪の娘は軽く息をつく。
「頼也さんが昨日――ユーオンのことを占われたんだけど」
「へ? ヨリヤが?」
「あまり良くない結果だったみたい。妹と人形が禍を呼ぶって……それ、妹ってやっぱり、ラピのことになるの?」
「……――……」
少年にはそれよりも、もう一つの方が気になる単語だった。
「……人形って? ツグミ」
「わからないけど、頼也さんは、ヒトに限りなく近い人形って首を傾げられてた」
妹と人形。その言葉が当てはまる何かを、今の少年には断定はできない。
ただ強い頭痛を振り払うように、顔を歪める。
「まぁ――例の人形達には確かに襲われそうだし。ありがとうツグミ、気を付けるよ」
「……」
穏やかに礼を言う少年の前、赤い髪の娘はおもむろに、袖から何かを取り出していた。
「――? 何これ?」
そして渡された、札束のような護符。少年は目を丸くし、対する娘は素っ気なく答える。
「みんなで書いたの。それぞれ色々力も込めてあるから、良かったら使えば?」
「――へ?」
「ユーオンなら、どれがどんな力か何となくわかるでしょ? ヒヨワなんだから、戦う時は道具を上手く使いなさいよ」
「……――」
渡された護符は、同じ家系の者が、目前の娘を含め、各々の力を込めてくれた呪符。どれをとっても、温かいものばかりだった。
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