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「……来てくれてサンキュ、ツグミ。これ――ツグミや御所のみんながそばにいるみたいだ」 「礼なら頼也さんに言って。私はただ、占いを伝えるついでに渡しに行くよう頼まれただけだから」  あくまでそっぽを向いた娘に、少年は無防備に笑い、礼を口にした。  それはおそらく――彼らの前で殺したくないと言った少年に対する、赤い髪の少女の答だ。  青白い月夜のことを覚えていなくても、少年は何処かで悟っていた。 「無くなったら取りにおいでって、頼也さんは言われてたわ」  事も無げに娘はそれも口にする。その後は連れの友人と話す瑠璃色の髪の娘を見ながら、再び難しい顔で言葉を続けた。 「あのね、ユーオン。悠夜から最近、訊き出したんだけど……」 「――?」  赤い髪の娘の従弟で、守護者である公家の次男。最も強く力を受け継ぐ子供の名に、少年は不思議な思いで娘を見つめる。 「少し前から悠夜、浮かない顔をしてることが多くて。なかなか何も話そうとしなかったんだけど……昨日の占いの結果が出た後、ようやく話してくれたのはね」  赤い髪の娘曰く。とても強い霊的な感覚を持ったその子供は、視たくないものに気が付いてしまったという。 「ラピのね――……本当のお母さんの霊が、成仏せずにうろついてたって言うの」 「……え?」  娘の視線の先では、瑠璃色の髪の妹分が心から楽しげに、帽子の友人と話をしている。 「それ自体は、悪さはしないって言ってたけど……ラピ、様子が変なこととかはない? そういうのって無意識に影響を与えてくることがあるから」 「わからない。前から大きく変わってはないけど……でも……」  友人達は、その母が自ら命を絶った者とは伝えられていない。  その瑠璃色の髪の娘はとっくの昔に、差し迫った身。少年はおぼろげに、「銀色」ははっきりとそれを知っていた。  そんな話が出ていることは、露も知らない瑠璃色の髪の妹分。帽子の友人が渡してくれた、PHSに取付けられる仕立ての小さな巾着を、まじまじと眺めて驚いていた。 「いいの? いきなりこんなのもらっちゃって」 「うん。ラピちゃん何か、元気無かったしさ。お守りになるといいなと思って」 「そうだった? 私は全然、いつも通りのつもりなのに?」  むしろここの所は家に帰り、調子が良かったはずの彼女は首を傾げる。
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