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「だってさ、おじさん達とずっと連絡、とれてないんでしょ? それだけでも心配で落ち込んじゃうって」
「それはあるけど……でも、伝波が届かない所に行ってることも本当によくあったから」
同じ通信道具を持つ養父母が、少し前から音信不通となっていたこと。言われてからその養女は思い出したようだった。
しかしそれは、あまり考えたくないことであるのか、PHSの飾りに視線をすぐに戻す。
「これ、何が入ってるの? お守りなら開けない方がいいよね?」
「うん、こう見えても高収納性なんだよー♪ つまんない物も入ってるけど、メインは前にラピちゃんと行った、火狐神社の狐の形した琥珀のアレ! ラピちゃん確か、可愛いってずっと見てたしさー」
「ええ!? あれ結構高くなかった、くーちゃん?」
ごく小型とはいえ、上質な天然石の名を口にする帽子の友人に、日頃あまり動じることのない瑠璃色の髪の妹分が少し慌てる。
「それがね、最近ちょっと旅芸人一座さんのお手伝いしたら、後でお小遣いもらっちゃって。臨時収入あったからさ~」
……むむむ、と瑠璃色の髪の妹分は小さな巾着を凝視する。
そのままの顔で、くるりと帽子の少年を見てさらりと言った。
「でも……火狐神社って、安産祈願じゃなかったっけ?」
「え!? そうだっけ!?」
帽子の少年の動揺に、アハハと瑠璃色の髪の妹分が笑う。
「何でそんなとこ御参り行ったんだっけ!? てっきり確か、家内安全とか商売繁盛とかそういう系って信じてたのに!?」
「わかんないよー? 学業成就だったかもしれないよー?」
「うわぁどうしよう、神様困るよね怒るよね!? ラピちゃんこれから、お受験の予定とか作ってくれる気ないよね!?」
「……また、ラピスがクヌギで遊んでる」
焦る相手に更に油を注ぐのが、妹分らしい。傍から見守る少年はたはは、と苦く笑うのだった。
「思い出した! 買う時ちゃんと、厄除けでって言ったよ!」
「あはは。さすがくーちゃん、抜かりないー」
本当、有難う、と。表情豊かな帽子の友人の、楽しげで優しげな笑顔を写すように、幸せそうに笑った妹分だった。
昏く赤い夢など無かったことのような、いつも通りの危うげな微笑みで。
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