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自分は昔、天空の聖地に住んでいた――
そう語る占い師が現在覚えていることは三つだと、茜色の髪の少女は告げられていた。
「私は約二百年前には、『地』にて『黄の守護者』の血をひく貴女様の乳母をしておりました。しかし当時起こった大規模な魔族の襲来の際、貴女様は命を落としてしまわれ……けれども、貴女様は必ずいつか帰られることだけはわかっておりました」
「……は??」
「私自身、貴女様が現れるまで存命可能かわかりませんでした。そのため、貴女様がおそらく訪れられるだろう聖地に、自身の記憶を別個に封じておいたのです」
そのため今の占い師にわかるのは、少女が現れた時に少女を判別するための「気配の記憶」と、最低限の「己の情報」に、「記憶を隠した所」だけだという。
「って――……結局、どーいうことなのよ?」
「……貴女のその羽は、紛れもなく――……乳飲み子の頃より私がお育てした、ミラティシア・ゲール様のものです」
普段は人目に触れることもない翼。少女が意識しなければ現れない、その背に刻まれたある光。
占い師は両目に涙を溜めながらそれを見通し、口にするのだった。
「もう、水華ってば。一番出かける用事のある人が、最後に起きてくるってどーいうことなのー?」
「んー……眠いっつーの……」
寝ぼけ眼をこすりながら、茜色の髪の少女は占い師が待つ京都に向かう。家を出てから妹分はずっとつっかかるように話しかけている。
「せっかく鶫ちゃんやくーちゃんが来てくれてたのに~。別に水華、朝弱い方じゃないんだから、紹介できると思ったのにー」
「仕方ないでしょー……何か沢山、変な夢見たし……」
珍しく少し覇気のない少女に、妹分も首を傾げる。
「どんな夢見たの? いつも爆睡なのに、珍しいね?」
「んー……どーでもいい感じばっかりでよく覚えてないけど。途中でユーオンは外に出てくし、とにかく眠りが浅くてさぁ」
「……へ? オレ、起きた覚えないけど?」
首を傾げる少年に、少女は不服気な目を向けた。
「よく言うわよ……何かずーっとうなされてたわよ? エルかエアか知らないけど、何でだーって、ぶつぶつと」
「……――へ?」
一瞬、金色の髪の少年の時間が止まりかけた時に、ちょうど最初の目的地――占い師との合流地点で占い師の姿が見えた。
それ以上その話は続くことなく、京都を後にした一行だった。
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