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「……――」  少年は一度辺りを見回し、神父以外に誰もいないことを確認する。 「大丈夫ですよ。ここはアラス君が丁重に創ってくれた、誰も巻き込まずに君達とお話ができる特別空間ですから」 「……!?」 「彼は非常にお人好しなんですよ。君と水華さん以外は決して傷付けたくないと言いますし、あまつさえ君のことは生け捕りにしなければいけないんです、俺達は」  何故か神父は楽しげな笑顔で、ひたすら緊迫顔の少年を見ていた。 「仕方ないので、水華さんの方には別の者を行かせましたが。果たして敵うかどうか……難儀なことですね、本当に」  まるでさも、不利なのは自分達と言いたいような笑顔に、少年は顔を歪めた。 「アンタは何者だ――……契約者って、どういうことだ?」 「――簡単な話ですよ? 俺は悪魔ですから。悪魔と人間の関わりは常に、魂を代償に望みを叶える――それにつきます」 「……じゃあ、アンタの契約者って……」 「ええ、人間の子供です。最もソールが契約している悪魔は、俺だけじゃないんですけどね」  話しながら神父は、羽織っていたケープを胸の中央で止める輪に手をかけて取り去り、まさに神父のような服装を露わにする。 「それでもソール曰く、俺かアラス君が本命らしいですけどね?」  その姿に少年は、これが茜色の髪の少女の言っていた敵の一人。人形使いの子供を守る神父だと、改めて確信する。 「……アンタ達は……まさか、みんな――……」 「――?」  ケープの留め具である輪を、布をはためかせた状態のままで、神父は倍近い直径に広げた。車輪のような輪杖が、神父にとっては武器であるとわかった。 「あの守護者もアンタも……悪魔の血を持つ奴は、みんな……」  そうして武器を取る相手を前に――何故か少年は剣を抜くことも忘れて、立ち尽くしていた。 「アンタ達は、悪魔を人形として使える人間の……奴隷なのか?」  目の前の神父も、突然旧い仲間を裏切ることになった守護者も。それが人形に宿る悪魔でも、生者そのものの悪魔でも生者に憑いた悪魔でも、自在に取り入る者の傀儡であると少年は悟る。 「……おやおや。君は随分――本当に勘が良いようですね?」
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