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「――!?」  大きな動きで斬りかかった少年を、苦も無く神父は見切り、再び輪杖で剣戟を防ぐ。 「今度は『火』――!?」  剣に乗せて突き付けた札には、元は松明程度の力しかない。それが強力に発火し、水耐性の輪杖では防げず神父を一息に飲み込んでいた。 「……――!」  発火の直後に反転して少年は距離をとったが、火だるまになった相手にダメージは少なかった。 「全く……俺も『水』の家系でなければ厄介な一撃でしたね」  着衣一つ焦がすことはなく、神父は全ての火を消し止めていく。  そして何故か――今はほとんど誰も呼ばない少年の名を口にした。 「……君は本当に……面白いヒトですね、ユオン君」 「……――え?」 「他人が込めた多少の力を、爆発的な威力に変えられるなんて……『ピアス』の情報に、そんなことはなさそうでしたけどね?」  それはいったい、どんなに強い呪いの類の言葉だったのか。  銀色の髪の少年の全身が瞬時に強張り、強い動揺が少年を襲った。  そして何より……その動揺の理由が全くわからないことが、銀色の髪の少年を混乱させていた。 ――……ピアスって――……誰、だっけ……?  ――知っている。  自身は確かにその名を知っていると、そこまでわかっている少年なのに、知っているということしかわからなかった。  それがどれだけ、少年にとって大きな存在であるのか――  それなのに何一つわからないことの動揺に、知らず片膝までついてしまう程の衝撃を受けていた。  そうした少年の動揺を知ってか知らずか。  様々な力の込められたお札という、新たな戦法を使ってきた少年を警戒するように、神父が一度距離をとった。 「あちらも思わぬ苦戦状態のようですし……今日は水華さんは諦めましょうか」  標的は少年一人に切り替えるというように、そう口にする。その声に呼応するように、薄暗い空間が突然大きく揺らいだ。
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