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「……――え……?」
揺らぐ空間の隙間から、その向こうにいた茜色の髪の少女や妹分を背にして、それはこちら側に飛来していた。
茫然とする銀色の髪の少年の前に、物音一つ立てない殺戮の人形。
その赤く幼げな天使は、大きな黒い翼と鎌と共に、場に降り立っていた。
「――……――」
そんな――……と。
その人形が何かわからないまま、ただ胸を切り裂くような衝撃だけが、銀色の髪の少年を激しく蹂躙する。
「……ウソ……だ……」
胸骨上に何か填める、円形の窪みのある簡素な赤い鎧を纏う人形。黒いもやもやとした羽を生やし、おそらくそれは天使を模した人形だった。
表情は全く変わらないが、あどけない顔立ち。少年以下の齢の少女をモデルに造られただろう、天使の人形。
横側で束ねた長いまっすぐな黒髪に、何故か赤い猫耳も取り付けられている。そんな黒い目の赤い天使が、人形のはずなのに少年をじっと見つめた。
「……どうやら本当に……彼が本命ですか? ソール」
少年はわけもわからず、剣まで取り落として座り込んだ。
その少年の姿に、神父はちらりと、空間の隙間からやってきた別の人影を見やる。
「残念ながら彼は、君が取り入れる悪魔ではありませんが……」
やってきた小さな人影は、短い黒髪と鋭い緑眼の、男の子に見える幼げな子供だった。黒く大きな目の灰色の猫のぬいぐるみを抱えて、無表情に神父の足下に立ちながら、少年を見つめてきたのだった。
そしてあくまで、無機質なままの顔と声で。
「……ユオン……兄さん?」
ただその一言だけを、その幼子は口にしていた。
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