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「霊獣はあくまで、『力』の本体が異界から投げた影だ。この世界の俺と入れ替わることでしか、本来は実体はとれないが……影をとことん濃くしたら、何とかこれくらいになった」
何でもないことのように言う養父だが、その特殊な能力のために、少年達が閉じ込められた異常空間を見つけ、破壊できたのだ。納得しつつも不安が残る少年なのだった。
「……何ですぐにオレ達のこと、見つけられたんだ?」
それは色々な意味で尋ねた少年だったが、養父は淡々と答える。
「ラピスが置き手紙をしてたからな。『伊勢に行ってきます、その後は水華が『地』に行きたいみたいです』って……本当に入れ違いになったけど、まぁ、危ない所に間に合って良かった」
「……」
他人には無愛想な養父が、少年や養女にはこうして笑うことは多い。それにしても、あまりに安心したような養父の様子に、逆に少年は何か引っかかる思いが消えなかった。
「おとーさん、おかーさんは今は何処にいるの?」
飛竜の背から落ちないように振り返って、当然の疑問を妹分が尋ねる。養父は困ったようにまた笑う。
「どうしても手が離せない仕事があって、アフィだけ向こうに残ってるんだ。家を長く空けたから、ラピスとユーオンのことはずっと心配だったし」
だから片方だけが、何とか一度帰ったのだと口にする。
「それじゃあ……この後はまた、すぐお仕事先に帰るの?」
淡々と妹分は、さすがに笑ってはいないものの……特に大きな憂いも見せず、事務的にそう尋ねていた。
「いいや。今度はラピスもユーオンも連れていくよ……まずは水華の用事を、『地』で終わらせた後に」
何故かそこでは真面目な顔で、養父は憂い気に言ったのだった。
伊勢の地に一行が着き、飛竜が消えた後も茜色の髪の少女は眠ったままだった。先刻の空間で、赤い天使と戦って消耗したのだ。少女を抱えながら山道を、占い師の目的地まで同行するという養父に、占い師もそこで話を始めた。
「レイアス殿……この件に関わりを持たれるつもりか?」
「ああ。水華が『地』に行きたいと言う時は手を貸すように、元々言われているんだ」
それは茜色の髪の少女の養父母――養父には義理の両親の言だという。しかし、と占い師は憂い気に顔を伏せる。
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