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「事は思ったよりも、大きく動いているようじゃ。先程現れた者達の狙いも『地』――そこに在る『黄輝の宝珠』と見える。こちらに現れたのは、赤い鎧を身に着けた天使の人形と、その人形の使い手の子供だけであったが……」  飛竜の背に乗り、少女を膝に寝かせる間に、何やら占い道具のカードを占い師は切り続けていた。 「お主とお主の養子と、その人形には並々ならぬ縁が見える。宝珠や魔王とは、何も関係ないはずのお主達を……十八年前と同様に、望まぬ悲しみへと引きずり込む棘の鎖が」 「…………」  養父がその連れ合いと出会った頃に、偶然関わってしまったある魔王の手の者。それで養父の故郷は滅ぼされ、沢山の大切な仲間を失ったという。 「まず間違いなく――その人形を造らせた悪魔こそ、お主の仇……前代の北方四天王の遺物が、今のお主達の敵じゃよ」  養父は茜色の髪の少女を抱えながら、大きく肩を落として溜息をついた。 「またそれは……思い出したくない奴の名前が出て来たもんだ」 「今代の北方四天王も敵側の手に落ちたようじゃ。敵の現在の根城も、北の島とみて間違いはなかろう」 「なるほどな。それなら北の聖地は使えないな」 「その通りじゃ。この伊勢からも『地』に飛ぶには、さすがの飛竜も力が足りなかろう」 「ああ。俺と水華だけならいいが、ラピスとユーオンを連れていくなら、『火の島』経由で行かないと駄目だろうな」  段々と近付いてきた、奥まった場所にある古い祠を、占い師はきょろきょろと探す。 「……おお。これじゃ――確かにこの祠じゃ」  獣道に近い山道の終点に、行き止まりの岩に埋め込まれるような、苔と草に覆われた古い小さな社があった。そこを開けて、占い師は僅かに白く濁った、大きな水晶玉を取り出していた。 「間違いない……わしの羽を封じた、懐かしき商売道具よ」 「……結構重そうだな。すぐにはくっつかないんじゃないか」 「そうじゃな。完全に記憶が戻るには時間がかかるじゃろう。羽が馴染み次第、わしもお主達の後を追うことにしよう……一足先に『地』へ向かい、我が君の本懐を遂げるために、よろしく助力を頼むぞ、レイアス殿」  占い師はそして、養父の腕で眠る茜色の髪の少女を、改めて涙混じりのくすんだ赤い両目で見つめる。同時に大きく深い息をついていたのだった。
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