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「そっかぁ。ユーオンは厳しいねぇ、本当に」  妹分はそこで初めて、軽く考えるような目で両腕を組んでいた。 「厳しい……のか?」 「だって、ろくでもなかったら生きてちゃダメって言ってるよ?」  そうなるのか? とポカンとする少年に、妹分は明るく笑う。 「自分のこと限定なんだろうけど。おかしな話だよねぇ。世の中、ろくでもないヒトなんて腐る程いるのにね」  けらけら楽しそうな妹分に、今度は少年が軽く考え込んだ。 「……ろくでもなさにも、程度があるだろ?」  そして何とか、それだけ言い返したが。 「うん。ユーオンは私より、軽症だと思うよ」  これまたあっさりと、半ば本気で――妹分はそんなことを笑って口にしていた。 「……――」  その深い青の目の危うさは確かに、少年より差し迫っている。それをかなり前から気付いていた少年は息を飲む。 「どの道どっちも重症だったら、ホント傍迷惑だね♪」  しかしすぐ普段通りに戻った妹分に、二の句が告げなかった。 「ま、その辺りはおとーさん達の教育に、今後を期待しようよ」  そうして、それは養父母の責任だと、妹分は丸投げする。 「自分で自分を何とかするって。まだ私達、思わなくていいよ」 「…………」  ポカンとしたままの少年に、その時だけは心から穏やかに――前を行く養父の後ろ姿を見ながら、妹分は幸せそうに笑ったのだった。  それがかつて、瑠璃色の髪の幼い娘を救った……それでも、叶わない(のぞ)みだったとしても。  待ち続けていた者達が、一人でも帰ってきてくれたためだろう。いくらか落ち着いた様子の妹分は、茜色の髪の少女を抱えて前を行く養父を捕まえ、少女と二人で体験してきた道中について楽しげに語り始めていた。 「…………」  最早、有り得なかった幻の世界の赤い天使が実際に現れた衝撃など、何処吹く風の妹分だった。  その姿に少年は……オヤって凄いな、と何となく思った。 「……ラピスも……ミズカも……」  そして自身も、未だに混乱の中にあるわりには、大きな荷物が一つ下ろせたような安堵を隠せなかった。 「レイアスがいるなら……大丈夫、かな」  少なくとも今――薄氷に乗ったような平穏でも、それが続いていくのなら……それも一つの答なのだ。  少なくともそれを、この六年は続けてきたはずの養父に、素直にそう思えた金色の髪の少年だった。 +++++
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