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一通りそうして方針が決まった後で。
何やら養父は、少年の持つ護符を見せてくれ、と一つ一つを眺めて妙に感心しているのだった。
「こっちの赤っぽいのは、五行を三枚ずつ書いてくれたのか。紫っぽいのは――『来るな』、『見るな』、『黙れ』の念が強いな……結界、隠術、力封じが基本か。そこから応用も利きそうだな」
「……」
養父は実に具体的に、護符の力を見極めていく。
「この暗い青は、純粋な地の力だな。固体の震動、粉砕、色々使えそうだが……もしや青の守護者の直筆か?」
「……多分。レイアスはヨリヤのこと、知ってるのか?」
「会ったことはないが、今代の守護者のことは一応把握してる。黒の守護者なんかは、俺の仲間が可愛がってたけど……」
よりによってその守護者が魔王側に与するとは、と養父も苦い顔をする。
「それにしてもこの黒い札……一枚しかないが、物凄い力だな」
「あ。多分それ、ユウヤのだ」
守護者の子供だと説明する少年に、納得したように養父は頷く。
「何でも闇に還したり無効にできそうな力だけど、使い所に注意しろよ」
「うん。一枚しかないから大切にするよ」
そして、と。残った一番沢山の護符に、養父は微笑ましそうにする。
「凄いな。闘気がこもる札なんて初めて見たよ」
「……ジュンまで何で、書いてくれたんだろう?」
「闘志」と書かれた素朴なそれは、術師のものではないため、大した力は無いと言う。それでも兄弟子――花の御所にいる公家の長男が書いた札は、同じく剣士の少年にとっては、自身の力を非常に乗せやすいものだった。
「ユーオンの役に立つなら、って奮起してくれたんじゃないか? 一番沢山あるし、親身で負けず嫌いな子の気がするけどな」
「…………」
「まぁでも、ヒトの力とはいえ、使うだけでもユーオンは体力を消耗するはずだ。どのお札でも、一日五枚以内には抑えた方がいい」
「……最高でどれくらい?」
「七枚は絶対超えるな。例外は、この赤の『水』の札かな」
残り二枚の「水」の札だが、少年にはそれが命綱だろうと養父は硬く念を押す。
そうやって一通り、養父は少年の護符に助言をくれた。
「レイアスって……凄かったんだな」
しみじみと言った少年に、何だそれ、としみじみと養父も苦笑う。
「今度帰ったら、花の御所にお礼に行かないとな」
そこで申し訳なさそうながらも嬉しげに、護符の束を見つめていたのだった。
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