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「もうお父さんのことが大好き過ぎて、お父さんが可愛がってる私にまで焼き餅焼く程、子供っぽいお母さんだったよ。多分、お母さんには娘じゃなくて、お父さん似の息子がいた方が幸せだったんじゃないかな?」 「…………」 「でも別に、私のことちゃんと育ててくれてたし、体術だって教えてくれたし。とにかく悪気のないヒトだったから、きっと……私のことも、大切に思ってくれてたんだと思うよ」  それは紛れもなく、瑠璃色の髪の娘の嘆きと諦め。連れ合いをなくした後に、正気を失い自ら命を絶った、純粋と言えば純粋な実母への答だった。  あっけらかんとそんな話をした娘は、少年に改めて笑いかける。 「でもそんなこときいて、ユーオンはどーするの?」 「……」 「ユーオンだって何だか一杯一杯なのに。私のことそんなに、心配してる場合じゃないんじゃないの?」  まるで娘は、少年が何故そんなことを尋ねたかわかっているように……逆に少年を心配するように、綺麗に微笑んでいた。  少年はそんな娘に対し、一度だけ小さく溜息をつく。 「それで――……あんたはいったい、誰なんだ?」  妹分の様子がおかしいというよりも。  妹分でないのに妹分の姿をした、おかしな誰かの存在に――少年は怪訝な顔をしつつ、淡々とそう尋ねたのだった。  いやだなぁ、と。瑠璃色の髪の娘は少年に明るく笑いかける。 「私はユーオンの『妹』だよ――ユーオンには多分、そうとしか見えないはずだけどな?」 「……?」 「でもそうだね。ホントの妹さんの記憶はもらっちゃったから、もうその姿には見えないだろうし。悪いことしたかなと思うけど……でもユーオンの妹は、私だけで充分だと思うしなぁ」  あくまで悪意の無いその娘は、瑠璃色の髪の姿をしている。しかし何故か金色の髪の少年の目には後一つ、うっすら重なって観える誰かの姿が浮かんだ。 「……え……?」  誰かはそっと、今そこにいる娘を少しだけ上書きする。  少年からその混乱を奪うために、白く綺麗な微笑みを見せる。 「わたしのことはもういいから……ラピスを守ってあげて?」  そう語りかけてきた、黒い髪で青い目の少女。それはつい最近、少年が目にしたはずの誰かとよく似ている。  それなのに目の前の誰かを観ようとするそばから、その誰かの情報は少年からぽろぽろと零れ落ちていく。
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