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そうした感じで、些細な異状には見舞われつつも。
伊勢を出た後は至ってスムーズに、西の大陸の北東端の大国、ディアルスに一行は辿り着いていた。
「飛竜があると、洒落にならないくらい早いな……」
「そーだよー。港までひとっ飛び! 後は船に乗るだけだもん」
「前はこんなに、レイアスが実体のままで使えなかったでしょ? 何だかんだでまだ進歩してんのね、やるなぁレイアスも」
わいわいと賑やかな子供達を連れ、その年齢の子供がいるように見えない若い養父は、よく使う宿に子供達を押入れていた。そのまま一人、王城へ向かう旨を告げる。
「火の島は極秘扱いだから、立ち入るにも許可がある方がいい。少し日数がいると思うから、誰もくれぐれも単独行動しないことと、あまりひと気の無い所には行くなよ」
魔の者は基本、派手に人界に干渉し過ぎると天使の制裁に合うため、人間の多い所での戦いは避けることが多いと言う。
「お出かけはしてもいーの? おとーさん」
「ああ。毎日夜には帰るし、何かあればPHSに連絡してくれ」
この国程度の広さ、王城程度の距離であれば、駆けつけるのは造作も無いと。飛竜を駆る養父は穏やかに笑った。
「相変わらず……ここも独特な雰囲気だよな、本当に」
近代的な鉄筋構造物が中心の、商業都市が多い西の大陸にしては、石造りの建物が多く古い面影を残す国がディアルスだった。
「さすがにジパング程じゃないけどねえ。別の意味で神秘的?」
「実際神秘でしょ。神暦の頃から保たれてる構造物があるって南で習ったじゃない?」
「水華ってば本当に、どんな状態の時も、世界学の授業だけはしっかり聞いてたもんね」
そうして王都で、ひと気の多い場所を気ままに散策していた子供陣だった。しばらくして、瑠璃色の髪の妹分が不思議そうに金色の髪の少年を見つめ、ふと口にしていた。
「そう言えばユーオン、普通に外出てるけど……最近あんまり、引きこもりじゃなくなってる?」
「そりゃ……単独行動禁止なんだろ?」
「そうだけど、それなら宿にいようって言いそうだよね、前のユーオンだったら」
やはり首を傾げる妹分に、少しだけ少年は困ったように笑う。
「……会いたくない奴はもういないから。外に出てもいいんだ」
「?」
懐からこの国内の住所の書かれたメモを取り出す。今回は寄るのは難しそうだと、あっさり諦めて懐にしまう。
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