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「いいか? くれぐれも今回は、潜入だけが目的だからな」  ディアルス王城で「火の島」へ立ち入り許可の手続きをとり、養父はこれまでの仕事の報告もしてきたらしい。  「火の島」――ひいては「地」へ行く目的について、同行の子供達に何度も同じことを言い聞かせる。 「おそらく宝珠を失ってからの『地』は、魔の縄張りと見ていい。俺も行き方を知ってるだけで、実際に『地』に行ったことはないから何とも言えないが……」  特に茜色の髪の少女には、口を酸っぱくして言う。 「水華がどうすれば守護者として認められるのかも、梅さんが合流してからでないとわからないだろうし。だからあくまで、それまでは『地』の現状を知るための潜入に止める」 「えぇー。レイアス何でそんな弱気なのよー」  ともすればそのまま勢いで行動しかねない少女に、頑強な顔ではっきり駄目だ、と言い付けるのだった。 「敵の目的が全くわからないんだ。梅さんは黄の宝珠狙いだと言うが……それなら何故、水華はともかく、黒の守護者や北の四天王まで必要なのかわからないだろう」 「……」  何らかの「資格者」として狙われ、魔王側に堕ちた者達。金色の髪の少年が灰色の眼の養父に伝えたのはその三人だった。 「共通点は全員が魔の気と、『水』の力を持つことくらいだがな。実際姿を視れば、違うこともわかるかもしれないが……」 「……レイアスはミズカ以外、直接には会ってないしな」  宝珠とは基本的に、地水火風空の五大要素を司るものだ。ただしその色は他に司る五行の気に左右されている。 「黄の宝珠は五行では『土』、五大要素では『空』だ。水華は確かに守護者になれるが、他の『水』の奴は何で関わるんだ?」  様々な力を一つの身に持った茜色の髪の少女が、「水」と「火」寄りの強い力を持ち、更に黄の守護者たり得る「空」の因子を持つこと。義理の兄である養父は以前から知っていたというが、金色の髪の少年は、複雑な気分で紫の目を向ける。
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