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 三人の子供に気を配りながら行動する養父も、あまり余裕は無い様子だった。一行の中では唯一、茜色の髪の少女がひたすら元気でいる。 「それにしても本当、聖地って凄いー。伊勢の時も思ったけど、これなら何でもできそう♪」  最早妹分の目にも見える程、少女の羽は光を持っていきいきとその背にある。まさに絶好調という様子だった。 「本当にここは、聖の気しかないからな」  自然の力をメインとする、霊気が基本の霊獣族らしい養父は、後ろ盾が全く無いと憂い気そうだ。 「水華も黒の杖は、威力が落ちて力の消耗も早いはずだから、注意しろよ」 「わかってるってー。逆に白のが絶好調なんだから、こっちを使わない手はないでしょ」  魔の気と聖の気を分けて制御する魔法杖は、魔の気の方は特に弱まるはずだと言う。だから少女もお蔵入りにするつもりらしい。 「……」  きょろきょろ辺りを見回す少年は、何故か、どちらかと言えば好調だった。その少年の様子に養父も不思議そうにする。 「ユーオンも精霊か妖精だから、霊気か妖気持ちのはずなのに……神気も持ってるんだな、ユーオンは」 「へ?」  聖地が強めるのはそうして、メインが聖の気、いくらか神の気ということだった。極珍しいと言われる気を持つ少年を、養父は灰色の眼でじっと見つめるのだった。  私はホントに足手まといだろうなー、と。  その時空聖地を飛び立つ前に、人間である瑠璃色の髪の娘は、憂い気に口にしていた。 「夜になれば、一回は笛も使うこともできるけど……使った時に何が起こるかは、私もいつもわからないんだよね」  最近はそれでも、悪いことから守ってくれるように、と妹分は毎晩笛を吹いていたという。 「でも何でだろう。そうするようにしてから、私、忘れっぽくなった気がする」 「…………」  首を傾げて憂い気にする姿は、普段と違い心許なげだった。  そう言えば自分も忘れっぽくなった気がすると、同じように首を傾げた少年に、妹分は苦笑いを見せた。 「ユーオンも何か不調だし。早く心配事が、全部無くなるといいよね」
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