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 最近、「銀色」が全然現れないと。  飛竜の背に乗り、辿り着いた天空の聖地――「地」の上空を回りながら、思い出したように妹分が口にしていた。 「おとーさんが帰って、危ないことが減ったからかもだけど……ユーオンが強くなったら、もう『銀色』さんは出てこなくなるのかな?」 「そりゃないんじゃない? コイツ当分、銀には勝てないわよ」  飛竜の隣で滞空する茜色の髪の少女は、ヒト一人は運べそうなくらい余裕があるらしく、無意味にくるくると空中を回る。 「水華。気配封じの調子はどうだ?」 「上々ー。ちょっとあたしの気が強くて隠し難いけど、それは自分のことだから何とかなるし」  白い杖を片手に、魔法で一行の存在を少女に隠してもらうのが、この潜入作戦の基本だった。 「ユーオンの方はどうだ?」 「……うん。多分使えてると思う」  更には少年にも、養父曰く「見るな」という念のこもった札を隠行の術として使わせ、一行はその島……古より五つの宝珠を収める祭壇の「地」へ降り立っていた。  その島の全体面積は、ディアルス王都と大きく変わらない狭さだった。 「……何か何処となく、ディアルスと似てない?」  茜色の髪の少女が呟く通り、その白い島は石の構造物が基本で、小さな四角い家々が散在する他には森が多い。 「これも聖地の神殿と同じで、古代の遺物なのかもしれない。だからここまで形が残ってるのか」  戦禍の痕か崩れ落ちた家も多く、荒廃した空気が漂っている。それでもこのまま、すぐにもヒトが住めそうな街並みに、灰色の眼の養父も知らず嘆息していたようだった。  一行が降り立った場所は、「火の島」から一番近い島の西側だった。「黄輝の宝珠」はおそらく島の中央にあるはずだ、と養父は悩ましげに言った。 「陸路では多分、片道半日といったところだ。飛竜は目立つし力も無駄遣いできない。それでもどうしても行ってみたいか?」 「当たり前じゃない! あわよくばそのまま宝珠ゲットだし!」 「却下。潜入だってあれだけ言っただろ」  ポカリと少女をこづく養父に、少女は不満そうにする。 「俺達以外の、気配を隠した敵もいるかもしれないしな」
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