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「おとーさん、今はここは誰もいないの?」  一度ぐるりと「地」上空を回った養父は、その確認が目的でもあるようだった。 「完全に無人だったが、それでも誰かいた場合、相手も気配を隠してるってことだ。出会ってもいいことは少ないだろうな」  それはほぼ敵と、警戒する眼で言う養父に少年も賛成だった。 「万一はぐれたりした時は、合流地点はここにしておく。絶対すぐにここまで戻るんだぞ」  島の西端、「火の島」に一番近いだろう場所で、島の周囲を縁どる円柱の一つに養父が短刀で×印を付けた。 「えー。この間みたいに変な空間に飛ばされた時は?」 「飛ばされる前に、僅かな時間はあるはずだ。何でもいいから派手に力を使って合図してくれ」  そしたらまた、自分がそれを見つけて壊すと、淡々と言う。 「ラピスは銃だな。何かあれば躊躇わずに使っていいから」 「うん。今まで通りだよね、おとーさん」  そうした養父の諸注意を一通り見て、少年はつくづく、守るというのは大変なことだとしみじみ感じたのだった。  本当のところ、彼らはそれだけ――危険かもしれない場所にあえて足を踏み入れなければいけない程、差し迫っている。  宝珠の守護者の一人が敵で、かつて世界を脅かした魔王の残党を名乗る者に、養子と義妹を狙われている。灰色の眼の男は当たり前のようにその危機管理を請け負っている。  化け物としての男は、千族では最上級だが、今代の四天王――人間の血を持つ故に特別な力を持った「混血」には及ばない。更にはそれを超える、宝珠という力を持った守護者には敵うべくもないのに。 「黄の宝珠がないと……ホントにオレ達、まずいんだろうな」  今はただ、黒の守護者の甘さに見逃されている状態だった。
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