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「ユーオン! 人形使い、何処にいるかわかる!?」
「――え?」
妹分のことだけとにかくかばい、当惑気な少年に、飛竜の背で茜色の髪の少女が真面目に少年を見つめた。
「あいつらも気配隠してて、あたしは見つけられない。アンタそーいうの探すの、得意なんじゃない?」
「……わからない。今は何も――オレにも観えない」
ちっと少女は、舌打ちしながらも何故か嬉しそうに笑った。
「それなら仕方ないわね……何処行っていーかわからないから、『黄輝の宝珠』、拝みに行くわよ!」
「――え!?」
「水華、それってもしかして……」
少女はぺしっと背から飛竜の首を叩くと、島の中央へと進路を無理に向けさせる。
「あいつらがそれを止めにくるなら、一石二鳥ってもんでしょ!」
敵を探すのではなく、敵に自らを探させる。実益を決して忘れない少女に、少年は唖然とし、妹分は慣れたように、緊迫した状況下でも笑った。
「あたしは思う存分暴れるから、ラピはアンタが守ってよ」
「……ああ。そのつもりだけど……」
それでも本当に、敵がもし揃っていた場合は対抗できるのか。少年の浮かない顔付きとは真逆に、少女は理解できない程に、楽しげな顔付きをしていた。
「よーやく一矢報いてやれるチャンスなんだから! 仕返しはできる時にするのが鉄則よ!」
これまであまり、少女は思うような戦績をあげられなかったらしい。密かに鬱憤がたまっていたようだった。
「あの無敵人形がなければ、飛竜もいるし、人形使いを叩いてバカ守護者を無力化できたら他も全員たためる自信あるし」
「……――」
少女が描く勝利の構図は、少女一人ではさすがに有り得ない展開だ。
しかしそれは確かに、可能かもしれないと――その構図の一番障害となる相手の、弱味を既に観知っていた少年は声を呑む。
「ユーオン、どーしたの? 大丈夫?」
黙り込んだ少年を斜め後ろから心配げに、妹分が覗き込んだ。妹分は少しだけはっとしたように、その姿を見直していた。
「ユーオン……『銀色』さんみたいな顔してるよ?」
「…………」
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