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妹分の視界、少年の紫の目は何処か色合いが薄まっていた。
色はあくまで紫のままで、今までと違う澱みを持った目。無機質で無表情な何かが、まさに目を覚ましたような眼光。
懐から一枚、暗い青に観える札を手に取った。迷いなく少年はその彼らの……優しさと甘さを利用することを、そこで決意していた。
「地」の中央と思しき、他より大きな建物の立った場所に、飛竜がやがて着いたその時だった。
「――げっ、アイツ!」
「――!」
やばい、と茜色の髪の少女は咄嗟に瑠璃色の髪の妹分を抱える。飛竜の背からそのまま地上に飛び降りる。少年も事態には気付いたものの、すぐに飛び降りるには高度があったために躊躇してしまった。
地上ではまるで弓をひくように、三日月型の長い得物を、何故か少年の姿な青銀の髪の吸血鬼が飛竜に向かって構えていた。
「敵機――撃墜ってヤツ?」
吸血鬼の少年が、武器たる三日月の中心にある双角錐の黒い石から、黒い矢のような光を引き出す。まさに矢を放つように、飛竜目がけて吸血鬼はその力を一瞬で撃った。
「……!!」
実体に近められた飛竜は防御面が弱くなる。黒い光は本来の威力であれば飛竜を消し去れただろう。黒の守護者として宝珠の力を使った一撃。
矢を受け止めた飛竜はヒトを乗せられる余裕を失い、金色の髪の少年と共に地上に撃ち落とされることになった。
「こないだの仕返しだよん。飛竜のにーちゃん?」
少し前に、精魂込めて創った空間を壊されていた守護者。金色の髪の少年よりもやや幼い姿で、その青銀の髪の吸血鬼は現れていた。
――吸血鬼は化けられるんだよ。オレがこの姿であるように。
尖った耳と、コウモリのような七つの羽を隠さず、おそらく本来の姿……吸血鬼は十三歳程の外見で立っていたのだった。
「……――」
姿が薄くなった飛竜と共に、金色の髪の少年は何とか大過なく地上に降り立っていた。手にしていた一枚の札をすぐさま、無言のまま剣先に刺し付け、降り立った白い地面の上に突き立てた。
「――え?」
そこで確かに、年若く見える青銀の髪の吸血鬼は――
あどけない蒼い目を丸くして、突然現れた懐かしい力の気配に動揺を見せた。
「何で――……頼也兄ちゃんの、気配?」
金色の髪の少年を中心に、激しく揺れ出した地表。その真上で、力の主を探すようにそちらに気を取られている。
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