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「君はずっと、ソールの誘いを断り続けていますが……」  風の刃がまだ吹き止まぬ中、心なしか神父の防御の力が強まっている。余裕がある少女は黒髪の幼子の方をちらりと見て言う。 「……何。やっぱりコレ、あいつのストーカーだったわけ」  茜色の髪の少女は誰にも言っていないが、最近何故か寝不足が続き、特にこうした戦闘中には頭痛が頻繁に起こるようになっていた。今も襲い来る痛みに、納得したように神父を見返す。 「どーせあのバカ守護者も、この『契約』で落としたんでしょ。生憎だけどあたしはそんな、ヤワなメンタルしてないのよね」 「どうでしょうね? この中では君が一番、生粋の人形適性を持っていますよ」 「――は?」 「己が誰かの人形であることも気付いていない――誰よりヒトに似せて造られた、生きた人形が君ですからね」  白銀の髪の神父の姿をとった魔の者。少女の力を今までより強く弾くために、本来少女と同じ光の羽を、おそらく少年にだけ観える程の存在の薄さで、神父は人知れず展開していた。 「君は君の羽に動かされる、ただの人形ですよ。竜牙水華」 「……?」  それは少年も、初めてその少女を観た時に既に得ていた――世に有り得ない生き物への違和感だった。 ――……何だ……あれ……?  本来はどちらも魔性の紅の髪と目。それがその背に刻まれた羽に侵され、赤い光を放つ目になった、赤と紅の歪な少女。 「水華さん。何故君は、ここに来たんですか?」 「はい?」 「何故君は、『黄輝の宝珠』を求める。君のその体はただ――南と北の四天王の、情報を基に造られた人形に過ぎないのに」  ヒトに限りなく近い人形。ヒトでありながらヒトならぬ道で世に現れた、青銀の吸血鬼に似た存在だと、神父は告げる。 「人形に本来自身の心はありません。宝珠を失えば人形に戻る、あの黒の守護者のように」  地面を赤く染めながら横たわる吸血鬼。それは最早、呼吸も心臓の鼓動も、全てを忘れたような静かさに包まれていた。 「君はミラティシア・ゲールの羽に動かされ、その未練である『黄輝の宝珠』を求める人形です。人形であるからいくらでも、その身に違う心……違う系統の力を宿すことができる。このまま別に吸血鬼の羽を加えることすら、君には可能でしょうね」 「――……」
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