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「思えば既に人形だからこそ、望みを尋ねるソールの誘いも、君は撥ねのけられるのかもしれません」
人形には本当の意味で望みなどない。悪魔の血を持ちながら悪魔使いの幼子に屈しない少女に、神父は素直に、賞賛の目を向けているようだった。
様々な衝撃を伴う事実の暴露に、少年の後ろで、瑠璃色の髪の妹分が何も言えなくなってしまっていた。
「――で。だから……それが何なのよ?」
茜色の髪の少女はあくまで、目前の敵へ風刃を緩めることはしない。
「あたしが何であれ、あたしは気にしてないし。誰であろーと、あたしはあたしの好きにするのよ」
それは全く虚勢ではなく、淡々と少女は、まるで呆れるような顔付きで魔の神父を見返していた。
「アンタこそ、あのませガキの人形なんじゃない?」
神父を貫く視線の先に、黒髪の幼子も捉えて少女は息をつく。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんがほしい。あのガキの目的は、確かそんなんだった気がするし」
「そうですね。全くその通りです」
東の大陸にいた頃、幼子は一時少女を操り、姉として扱ったという。そして今は目の前の神父、更には黒の守護者を兄として求めていることを、少女は知るわけではない。
「ソール曰く、俺はユオン君と似てるらしいんです」
「……――へ?」
だからここで出た思わぬ名前に、ふっと少女は、意表をつかれていた。
「でも俺には既に妹がいますからね。仕方ないので……」
その幼子の兄にはなれない、と神父が笑うように言う。
「ソールはユオン君を、俺は君を――……この呪われた死者の、実の兄妹として求めているんですよ」
少年が決して、自ら口にすることができなかった話。
止める気にもなれない旧い夢の呪いに……少女は確かに動揺を受けたように、赤い瞳を大きく見開いていた。
「……それ……まじで言ってるわけ?」
当然ながら、まじまじと神父を見返した少女でもあった。
「あのガキが――……ユーオンの兄妹?」
しかしどちらかというと、少女自身のことより、少年と幼子の事情により驚いた風だった。
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