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 そうした冷静な少女とは裏腹に、少年のすぐ斜め後ろで、瑠璃色の髪の妹分がぎゅっと、少年のケープを掴んでいた。 「ユーオン……あのヒトの言ったこと、本当なの?」 「――……」 「水華はあのヒトの妹で――……ザイさん達には娘になるの? ユーオンは、あそこにいる子のお兄さんなの?」  真摯な目で尋ねる妹分に、少年は妹分の深い青をまっすぐに見られなかった。 「水華の羽と躰は多分そうだ……でもオレは、正直わからない」  黒髪の幼子に、確かに少年は何かの繋がりを感じていた。  しかしそれは先刻の赤い天使と同じ、中身のわからない大きな迷いばかりだ。 「でもそんなことより、今はアイツらを何とかしないと」 「ユーオン――」  それより今は、この場でとるべき行動について少年はひたすら悩んでいた――……いつまで自身は、こうしているのかと。  自らの正体を告げた神父は、動じていない茜色の髪の少女に楽しげに笑いかける。 「――驚かないんですね? 君は大して」 「……だから言ったでしょ。あたしが誰だろーが、あたしには関係ないって」  少女はぶんと白の魔法杖を振ると、風の刃だけでなく渦を巻く強い風をよび出し、攻撃の手を強める。 「どーせまた、前世のお兄さんとでも言うんでしょーが」 「ご名答。確かにそれは、普通はぴんとこないでしょうね」 「てかアンタ、さっきあたしが人形って言ったばかりじゃない。それなら兄もクソもないっつーの」  なるほど、と神父は、意を得たように頷いていた。 「それなら人形な君の、母たるヒトに来てもらいましょうか」  渦巻く風の中、身動きのとれない自身の代わりとばかり、新たな攻撃手をそこに呼び出していた。 「――!」  黒髪の幼子の傍にいた、銀色の髪の吸血姫が空から襲いかかる。 「ミズカ――……!」  華奢な体に合わない無骨な爪の武器を右手に、大まかな斬撃を振り下ろす。少女は難無く避けたものの、鬱陶しそうだった。 「もー! あたしはあのガキ叩きたいっつーの!」  魔法は神父の牽制に必要であり、その吸血姫相手は近接戦だと早々に見切る。白の魔法杖をそのまま短めの剣のように構える。  その姿を見て少年は更に迷いを強めた。 「……前に、出ないと……」 「――ユーオン?」
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