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「……あーあ……二人共、やられちゃった……」  つまらなさげに呑気な声が、黒髪の幼子から小さく発されていた。  幼子の足下には、人形の手で回収したらしい青銀の吸血鬼と、白銀の神父が横たわっている。 「――!」  その姿に気付いた少女は、再び羽を広げて力を使おうとした。  しかしそこで、思ってもみない者が突然前に出る。 「――え?」 「――は?」  場に響いた、無機質な銃の一声。  銃声の発信源を、少年も少女も驚きの顔をして振り返った。 「…………」  いつの間にか――黒髪の幼子とその傍の吸血姫を、射程範囲に捉える位置に立った瑠璃色の髪の妹分がいた。 「……」 「こんにちは――人間のお姉ちゃん」  自身と吸血姫にまとめて銃を向けている相手に、黒髪の幼子は変わらず呑気そうに言う。無表情のまま淡々と、瑠璃色の髪の娘をじっと見つめる。 「ちょっと、ラピ!?」 「ラピス……――」  その意外過ぎる展開に驚く少年達を、瑠璃色の髪の娘は振り返りもしない。ただ、娘がそこで銃を取る理由を告げた。 「……やっと、見つけた――……」  瑠璃色の髪の娘は、声をかけてきた幼子のことも見ていない。ただその標的……少年は既に知っていた、ある孤児の仇である銀色の髪の女性だけを見つめ、黒い銃口を向けていた。 「お父さんの仇の吸血鬼――……水華と一緒にいれば、いつか会えると信じてた……水華にそっくりの、あの時のヒト」  瑠璃色の髪の娘には、その心を脅かす者がいた。だから娘がそれを望むなら、少年は……その銀色の髪の女性を殺さなければいけないと、とっくに知っていた。 「びっくりしたよ、初めて水華に会った時は。だって……物凄くあなたにそっくりなんだもん」 「……」  無表情に瑠璃色の髪の娘を見つめる吸血姫に、娘も淡々と先を続ける。 「水華が親探しの旅に出るって聞いて……だから私も、一緒に行きたいって無理を言ったけど」  今動く吸血姫は別の魂という敵の話も、娘は覚えている。それでも人間である娘に、そんなよくわからない事情は関係が無い。長く探し求めた親の仇に、深い憎悪を向ける。
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