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――水華なら多分、一緒にいても大丈夫な気がするけど。
妹分の言葉には様々な意味があったことを、少年は知っていた。
――水華は嫌がるだろうなぁ。
理由があるなら、それは平気なのだ。何かの目的のためであるなら、たとえ誰かの負担になろうと、少年も少女もその目的を遂げる……同じ性質を持つがために。
代わりに願いも役目もない所では、自身の存在を異端に感じる。
――私はホントに、足手まといだろうな。
そこにいることを疑問に思う所も、全く似通った彼らだった。
いったいどうした因縁があるのかはわからなかった。
瑠璃色の髪の娘の実父は、確かにこの銀色の髪の女性のため命を落とし……そして幼い娘が全てを失ったこと。
それだけは最早、誰にも変えようのない過去だった。
無表情のまま瑠璃色の髪の娘が、吸血姫に向けた銃の引き金をひこうとした時――
娘にそれをさせたくないのに、止めに入れなかった少年や、力の反動で座り込み、動けなかった茜色の髪の少女の前で。
「――……おとー、さん?」
「…………」
未だに密度が薄いままの、霊体たる飛竜が、不意に瑠璃色の髪の娘の前に首を伸ばした。娘の深い青の目を、鋭い縦の瞳孔の、彩の無い眼で見据えていた。
飛竜の眼は自身の眼であると、ここに来る前に養父は口にしていた。
爬虫類の酷薄さな獣の眼。けれど、娘に手を汚させたくはないのだ。
もう一つの体である灰色の獣を通し、妹分の今の父たる男は、ただ真摯に己の娘を見つめる。
「……嘘吐き……」
瑠璃色の髪の娘はそのまま、飛竜の前で、ぺたんと座り込んでしまった。
「銃は……いつでも使っていいって、言ったのに……」
娘がここまで旅を続けてきた理由。茜色の髪の少女の傍に、この娘がいる必然性……そこに娘がいて良かった理由。
仇討ちという一つの意味を、俯きながら黙って手放した、瑠璃色の髪の孤児だった。
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