4人が本棚に入れています
本棚に追加
「――あれ? 『銀色』……さん?」
夕陽の逆光のためか、妹分にはそう見えたらしい。少年には特に、自身が変わった自覚はなかった。
帯剣には便利と勧められて、着用していた袴から剣を外した。柄に巻付けていた蝶型のペンダントも外し、首にかけ直した少年を、少し離れた場所から妹分が不思議そうに見つめていた。
そんな妹分に、少年はあっさり、その結論を告げた。
「ごめん、ラピス……俺には、無理だったみたいだ」
「――え?」
きょとんと少年を見る妹分に、少年はただ、穏やかに微笑む。
「俺は……これから先も、さっきみたいに邪魔をしそうだ」
彼らの心配事を解決できるはずの王手。それを自ら不意にした行動……明らかな裏切りを止められなかった自身を、一人嗤った。
「俺は……あいつを、殺せないんだ――……」
その時の思いはたった一つで。それが、青白い剣の逆光。
「それなら――……俺の役目は、終わったと思う」
殺したくない。そう望むなら、少年のするべきことは簡単だった。
「殺せないなら……剣なんて持ってちゃいけないんだ」
「……ユーオン?」
誰かが言う程、少年は強くなれそうにない。
それなら少年には、その選択しかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!