終幕

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「――あれ? 『銀色』……さん?」  夕陽の逆光のためか、妹分にはそう見えたらしい。少年には特に、自身が変わった自覚はなかった。  帯剣には便利と勧められて、着用していた袴から剣を外した。柄に巻付けていた蝶型のペンダントも外し、首にかけ直した少年を、少し離れた場所から妹分が不思議そうに見つめていた。  そんな妹分に、少年はあっさり、その結論を告げた。 「ごめん、ラピス……俺には、無理だったみたいだ」 「――え?」  きょとんと少年を見る妹分に、少年はただ、穏やかに微笑む。 「俺は……これから先も、さっきみたいに邪魔をしそうだ」  彼らの心配事を解決できるはずの王手。それを自ら不意にした行動……明らかな裏切りを止められなかった自身を、一人(わら)った。 「俺は……あいつを、殺せないんだ――……」  その時の思いはたった一つで。それが、青白い剣の逆光。 「それなら――……俺の役目は、終わったと思う」  殺したくない。そう望むなら、少年のするべきことは簡単だった。 「殺せないなら……剣なんて持ってちゃいけないんだ」 「……ユーオン?」  誰かが言う程、少年は強くなれそうにない。  それなら少年には、その選択しかなかった。
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