DR・エピローグ

1/1
前へ
/425ページ
次へ

DR・エピローグ

 あれれぇ――? と。ある日の昼下がりのこと。  月が出ていない時間でも、前夜から残っていることもあるその幻は、心から不思議そうな白い顔付きで首を傾げた。 「おかしいなぁ。鶫ちゃん達の心は、貰えそうにないなぁ?」  白い何かは、現在の居場所をとても気に入っている。 「もしやスカイちゃんに先越された? もう――あの子も本当、過保護なんだから。やっぱり追い出すべきじゃなかったかなぁ」  本来は住処でなかった瑠璃色の器へ、あるキッカケで移れた何か。それはいつもなら、元の住人を追い出すか、消し化えるのが定石だったが――居候であれば共存できる状態にあった。 「キラ君ばかり使っちゃ可哀相なのにな。まぁキラ君、私とは相性抜群だし、とても美味しいから私はいいんだけど?」  さらにはこの住処には、引きこもりを定められた何かも、外に出られる奇跡があった。その幻で、まさに新生活を謳歌している何かだった。 「あのコはどうしたいのかな。私を追い出したいか、それとも私に助けてほしいのか」  元の住人、もしくは目前の誰かの求める相手になり切ることを、何かは性としている。だから全ては対峙者次第、と白く微笑む。 「せっかくだから……この住処はしっかり、守らなきゃなぁ」  そのためであれば、多少の詐欺も構わない、とそれは笑った。 「あのコの敵を……君の妹の敵を、殺してね? キラ君」  そしてそれは、誰かの大切な何かを――白く塗り替え続ける。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加