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ラピと水華は、ラピが水華の義姉に拾われた六年前から、里帰り時に度々顔を合わせる間柄だった。
「あんたが笑いながら、美形以外生きる価値ナシ。とか言う度、ラピってどーいうコ? って、何度きかれたことか……」
「本当~、感謝してよね。私がそうしていれば、水華すら真っ当に見えたんだねー」
船にあまり揺れがないとはいえ、柵上で器用にバランスをとるラピは、家系に伝わる人間向きの護身術を幼少から体得している。同年代と比較して稀なのはそのくらいで、家系に関する事柄以外では普通の人間というのが水華の認識だ。
「真っ当でない猫を被るなんて、図々しいっつーの」
「うわぁ。水華に褒められちゃった。これから嵐になるよね」
「褒めてないし! クアン達の前のあんたの方が上等なのは、あたしも同意するわ」
「失礼なー。アレは私の、ノーモア真っ当モードなのにぃ」
「……はっちゃけてただけでしょーが、単に」
「ジパングではポッシブリー真っ当モードですよーだ。私にはそっちの私の方が、上等なんだもん~」
いずれにせよ、明るく危うげな部分をラピが見せる相手は限られている。水華の他には、同年代ではユーオンくらいだった。
いつまでも柵から降りようとしないラピを、苦々しい思いで水華は見続ける。
「クアン君達も鶫ちゃん達も、何か自然にいいヒト過ぎてさぁ。一度甘えちゃうと私、骨抜きになっちゃいそーだし、向こうは甘えさせてくれちゃいそーだし。そーいうのって、お互いのために良くないよね? うん」
「……ジパングの奴らも、あんな感じなわけ?」
水華の方は、自らの欲望に忠実であることを良しとし、気ままに生きている。ラピが言うように、自然体で普通に優しく在る同年代は釈然としない。
しかしそれが彼らには自然な状態とわかる、複雑な相手でもあった。聖と魔を併せ持つ水華は、案外人間に近いリアリストなのだろう。
「あんたがよくPHSで話す奴は、確かにそれっぽいけど」
「……くーちゃんはわかんない。いいヒトなのは、確かだけど」
ふっと、珍しく少しラピの笑顔が蔭る。
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