直前  -the calm tempest-

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「それだけ聞くと、そいつら化け物って確信できないんだけど。剣も銃も、呪術も人間だって使うし」  人間のラピに、何故彼らが化け物であるとわかるのかときくと、それは至って単純な理由だった。 「御所のみんなもくーちゃんも、西の大陸出身の私とは言葉が全然違うのに、会ったその日から話せちゃったんだ。それって化け物さん特有の能力らしいね?」  強い化け物――あえて呼称を探せば「聖魔」という水華や、霊獣やら何やらの義兄姉はともかく、島国ジパングの中心の京都は、本来は人間の国だ。それなのにそうした者達が紛れ込んでいるらしい。 「それに、蒼潤君の弟の悠夜君なんて凄いんだ。見た目は可愛い感じの、袴が似合う小さな子なんだけど、喋ると一番しっかりしてるの。天才って言われるくらい博識で、霊感もすっごい強いんだって」 「……ふーん」 「何でか私、たまに避けられてる気がしなくもないんだけど。ホントは凄く繊細な子みたいだから、何か私、邪悪なオーラが出てるのかも~」 「……へぇ? 自覚あったんだ、ソレ」  無愛想なまま感心したように言う水華に、ラピは笑って首を傾げる。 「悠夜君にはそんな、ヘンに接したつもりはないんだけどなぁ。鶫ちゃん達と会った頃は、まあ私、荒れてたんだけどねー」  あはは、と微笑むラピは、実の父を突然亡くした後、父を追って母が自殺した悲愴な過去がある。その後も二年近く養家を転々とさせられ、荒れる理由はあった後での友人達との出会いだった。 「…………」  友人達をひとまとめに呼ぶ時は、主に紅一点の鶫の名を出すラピに、水華は少しだけ眉をひそめる。
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