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「私も色んな所に行ったけど、ジパングのまったり感は凄いよぉ」
世界の内でヒトが住むのは、東西二つの大陸に、中央のジパングとその南にある島だ。最も文明が進む西の大陸が、護身用の銃を持ち、近代的な恰好のラピの出身地だった。
「水華と最初に行った東の大陸は、おとーさん達ともそんなに行ったことなくて、港町付近のことしかわからないけど……何処の土地も大概、港は一番栄えるって言うから、そうなると東の大陸はホントに未開っぽいね」
「つまり……港町すらしょぼかったと言いたいのね、あんた」
あはは、とラピは、悪びれもなく笑う。
「だから水華が言ってたみたいに、吸血鬼伝説とか怖がったり、村人総出で吸血鬼狩りしたり、凄い教会があったりするのかな」
「……巻き込まれた方はたまったもんじゃないけどね」
「電気も港町周囲くらいしかなさそうだったしね。南の島はその点、最近発展してきた所だから、開発途中なのに西の大陸なみの賑やかさがあるのが凄いね」
人口が最も多く、ほとんどが人間である西の大陸は、東半分に商業都市やディアルスなどの大国が集中している。
未開の東の大陸、先進の西の大陸の間の島ジパングは独特の文化を持ち、服装や建物、言葉が明らかに他とは違った。
「でも西の大陸も少し奥地に行けば、私の村みたいな古い所があるし。その点、南はもうかなり開発されて、ジパングに至ってはほとんどの土地が人間の居住地として整備されてるんだよね」
水華は何度か、ジパングにも行ったことがあるものの、ラピの家以外には京都に行ったことがある程度だった。
両親、義理の兄姉とラピとユーオン以外、水華には全然知り合いがいない。
――実はねぇ。あんたは私達の娘じゃないのよ、水華。
――……は?
育ての母――半年前までは実の親と思っていた相手が、突然正体を明かした後から、水華は親を探す名目の旅に出ることにした。実際の目的は家事や修行三昧の日々からの解放だが、それまではお金の単位も知らない箱入り娘でもあった。
――よ……よくも今まで育ててくれやがったわね!?
修行しか教育方法を知らないらしい親の下、育ての母には剣、父には魔道を教え込まれた。父はともかく、母の方針は恐怖政治に近く、こうしてジパングに向かう船にいる今も、実家にだけは帰るまいと心に誓う水華だった。
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