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「……何でだったっけ」
先程からずっと、不安定な体勢のラピが気になる。何でだっけ、と水華はふと、腕を組んで考え込んだ。
「水華? どーしたの?」
ラピがそこで足を止め、水華の方を振り返った時。
ちょうどそうして、バランスのとりにくい体勢をラピがとった時だ。
今まで静かそのものだった船が、突然大きく揺れた。
「――げ」
その瞬間に水華は、嫌な予感の正体を思い出す。
「――あ」
全く想定外に揺れた船に、足場をあっさり失ったラピは――背後に広がる海へふわりと浮き上がるように、景気の良い水しぶきの音をたて、一瞬で呑み込まれていった。
その姿は、水華には強く、見覚えのあるものだった。
何でだったの? と。
それがその時、同じ光景が訪れる直前に、水華が口にした問いかけだった。
「ちょっとラピ……!」
一瞬であっさり海中に消えた相方に、ただ水華は茫然とする。
「あんた……二度までも――!」
これと全く同じことが、半年前にもあったのを否応なく思い出して。
帰らないと決めた旅に水華が出る時のことだ。育ての母は何故か、彼女からは義理の孫を同伴するよう、水華に申し付けた。
――あんたはラピスちゃんを守りなさい、水華。
この海のように深い青の目を持つ義理の孫。空のような青の目の養母はただ痛ましげに見つめていた。
――あのコはとても……危うい子だから。
基本はただの人間であるラピと、化け物の血をひくらしき友人達。
初の船出で、単調な海の景色に飽きた水華は、深い意味もなく尋ねただけだった。
「何で、そいつらと知り合ったの?」
「――え?」
ラピは柵の上に、海に背を向けて腰掛けながら笑って答える。
「何でなんだろうね。私もずっと、不思議だったんだ」
「?」
「私ね、初めてジパングに来た頃、アクマって呼ばれてたんだ」
元々首を傾げていた水華は、唐突な話に、怪訝にラピを見つめる。
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