直前  -the calm tempest-

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「アクマって何なのかは、よくわからなかったけど」  ラピの髪は、人間であるのに瑠璃色をしている。  友人達やユーオンのような赤毛や金髪は、人間に有り得る色だが、人間の髪と目に深い青の色は存在しない。化け物扱いされるのも無理はないことだった。 「要は、余所者の私が目に障ったんじゃないかなぁ」  近隣の子供達と幼いラピは反りが合わず、周囲の子供は、言葉も通じないラピをアクマツキと言って罵ったという。 「でも、私は誰相手にも同じように荒れてたのに、くーちゃんも、くーちゃんが会わせてくれたみんなも、いつの間にか仲良くなってくれた。それがどうしてなのかは、わからないよ」  近隣の子供達と友人達の違いとして、ラピと言葉が通じることは確かに大きかった。しかし逆に、ラピはそれで、誰とも打ち解ける気などなかった内面を、態度だけでなく言葉でも伝えていた。  ジパングを後にする船の上で、寂しげに見える顔でラピは、水華に笑いかけながら思い出の一つを話した。 ――ラピちゃん、遊ぼー! 今日は習い事、いつまでなの?  京都にジパング語を学びに通ったラピに、よく街を歩いている帽子の少年は、度々声をかけてきたという。 ――……知らない。きっと終わったら、もう暗くなってるよ。  それに対して、色よく答えたことなどなかった。それでも少年は、すれ違えば必ず声をかけてくるのだ。 ――何で……いつも、笑ってるの?  少年とはたまに、同年代の鶫と蒼潤が一緒に街を歩いていた。子供にしては気難しげな彼らは、ラピを見ると何故かいつも、楽しげになったという。 ――このヒト達は……私のこと、何もきかない。  自分が嫌われたのは、自分に問題があったからなのに。  それだけは知っていたと、ラピは水華に笑って伝える。
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