直前  -the calm tempest-

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 水華はただ、違和感を確かめるために、同じ問いかけをした。 「何で、そいつらと知り合ったの?」 「――え? どーしたの、急に?」  ラピからすれば唐突だろう質問。しかしラピは嬉しげに笑った。 「きっとみんな優しい化け物さんだから、弱っちい人間の私も、気にしないで面白がってくれてるんじゃないかな。クアン君やザイさんが、水華は危なっかしいって助けてくれてたみたいに」 「……あんたと一緒にするなっつーの」  不服な水華と対照的に、穏やかにラピが微笑む。  しかしすぐにラピの顔は、苦笑いに変わる。気弱にも聞こえる声でラピは、ねぇ……と水華を見た。 「水華は南にいたかったら、無理してついてこなくていーよ? おば様達の言い付けは知ってるけど……ユーオンやくーちゃん達がいれば危ないことないと思うよ、私」 「……別にあたし、あんたのためにジパングに行くわけじゃないし」  現在はある目的のために、水華はラピの同伴を決めた。南の城で色々と新しく知ったことがあり、南の強者達を見返すためにも全くの本心だったが。 「……らしくないね、水華。私やユーオンのこと、心配してるなんて」  覇気なく笑いつつ、ニセモノと同じ心情を口にするラピだった。  だから水華は、先程までのニセモノが口にしたことも真実だと悟る。たとえそれが、ホンモノには口にできないことでも。 「水華もくーちゃんも……偉いよね」 「――は?」  船室に戻りながら笑うラピが、水華はただ鬱陶しかった。 「二人も私と一緒で、ホントの血縁はいないのに。私みたいに拗ねたりひねくれたりしないもんね」 「あんたねえ。スネオやヒネクレの何が悪いっつーのよ」  水華は生まれつき、反省という思考とは縁を切られていた。  在るがままを認め、使えるものは使い、自身に合わないものは切る。そして欲しいものができたから旅に出る、それだけだった。  前だけを見る揺るがなさは、時が止まったようなもので―― 「私も二人みたいに……強かったら良かったな」  振り返るしかできない、同じく時の止まった相方が、ただ笑った。 -了-
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