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 これで、金色の髪の少年が銀色の髪となり、御所で問題を起こすのは二度目となった。  銀色の髪の少年は、金色の髪の少年の心に関わらず、必要とあらば容赦なき殺戮者となる。御所中にそれが示されてしまった手前、公家は最早、何の処分もなしに済ませるわけにはいかなくなっていた。 「最初は確か、御所に魔物が郵送されてきた時じゃったのう」 「……」  ようやく目を覚まし、布団の上に起き上がった少年の横で、公家が鎮座していた。紫の目を伏せて俯く少年に、淡々と静かに話しかける。 「お主が初めて現れた時の、不審な依童(よりわら)人形の襲撃からこちら……何やら京都に、不穏な風が吹いておることは否めぬ」  この少年を公家が引き受けるキッカケとなった出来事。蒼潤と悠夜(ゆうや)という公家の子供達を謎の人形が多数で襲った時、通りがかった少年は変貌して蒼潤に加勢していた。その事件を含めれば、少年が銀色の髪となるのは三度目でもあった。 「お主の行動は、一貫しておるように思うが。お主は本当に、『銀色』の時のことを覚えておらぬのか?」 「…………」  公家の目には、少年の変貌は魔物や悪魔などを前にした時――苛烈ではあるが、何かを守るために少年が剣を取ることが映っていた。  銀色の髪である時の意志を、少年はほとんど覚えていない。わかるのは体の負担が大きいことだ。だから動ける時間が少なく、単身で魔を制す「銀色」に比べて、金色の髪の少年は自身の弱小さに悩んでいる。  そして公家は、公家自身が少年を罰したい理由はないのに、立場上甘い顔はできないことを苦悩している。それが伝わってくる少年は、ひたすら俯いたまま、口を閉ざすしかできなかった。 ――だから……何処にも、行きたくないって……。  どうせ家がわからないなら、あのまま拘置所にいれば、こんな迷惑はかけなかった。  客人が奇蹟的に生きていたとはいえ、少年のしたことはヒト殺しだ。少年は自身がそうした疫病神だととっくに知っていた。  今もなお、あの時殺し損ねた相手への、殺意の鼓動をこの胸は覚えているのだから。 「……――……」  少年を真摯に見透すような公家の、青みがかった黒い目には、怯えすらも感じてしまう。
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