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「ちゃんと効いてるみたいですね、父様の術は」
「――?」
それをついでに確かめたかった風の弟に、兄弟子がふむ、と頷く。
「悠夜と鶫と父上、すみれさんには絶対服従。っていうアレか?」
事も無げに言われた、その厳罰――「言霊」を使って告げられた命令には、逆らえない呪い。いつ何時「銀色」となり、何をするかわからない少年への首輪について、その実態を納得したらしい兄弟子だった。
「……何か……息が、苦しい」
しかし少年は、段々と青ざめてきた顔でそんなことを呟く。
「あれ。そこまで抵抗すると、命に関わっちゃうよ」
この命令だけは聞きたくなかった。呪いを受け入れたのは自己責任なので、難しい顔で黙る少年に、天使のような顔で子供が笑う。
「『抵抗』、『不可』。悪あがきは良くないよ」
びくっとそこで、完全に少年は、抵抗の気力の根すら断たれたのだった。
「それにしても……本当に、呪いと親和性が強いみたいだね」
罰としての呪いを、少年は公家から二つ返事で受け入れた。そのバカ正直さに、術師の子供はただ苦く笑ったのだった。
旅芸人一座。それはこの、身元が不明で記憶喪失の少年には、決して近付きたくなかった鬼門。
自らについてあまり口にしない少年の周囲は、知る由もない。
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