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 魔族や天界人。精霊や妖精、天使に悪魔。  様々な化け物が存在するこの宝界で、ヒトの形をしながら人間にない「力」を持つものを、まとめて「千族」と言った。 「……ユーオンは結局……妖精。って類になるの?」 「――え?」  剣の師の娘が、活動的な小袖が似合う肩までの赤い髪を揺らし、少年の尖った耳を見るように顔を傾けて呟いていた。 「そういう耳は、妖精とか吸血鬼に多い、って聞くけど」 「そうでもないよ、鶫ちゃん。『千族』ならわりと色んな姿が有り得るって言うし」  それに、と、黒髪の公家の子供――娘の従弟にあたる幼い術師が腕を組んで考え込んだ。 「妖精なら羽があるはずなんだけど……金色の髪に尖り耳っていうのは、確かに典型的ではあるみたいだけど」  有名なその妖の特徴を思い浮かべ、まじまじと術師の子供は少年を見ている。少年は何とも言えず、ただキョトンとする。  そんな話になっているのは、ひとえに―― 「――イーレン!? イーレンじゃない!?」  つい先程、全く同じ声が少年にかけられたせいだ。  そうして二たび、その名を持つ妖精を呼ぶ声が背後からかけられていた。 +++++
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