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「ちょっと――『銀色』、『自重』! ユーオン、待って!」  咄嗟に声をかけてくれた師の娘に、びくっと息を飲む。すぐに金色に戻った髪で、あれ、とばかりに胸元を掴んでいた。  きょとん、と、少年と師の娘を黒髪の花形が交互に見つめる。  花形に付き添う護衛は、当初から厳しげな顔で佇んでいた。 「……一瞬、強い殺意を感じましたが」  端整に整っている切れ長の目。しかし声には柔らかさもあり、事も無げに、剣を抜き放った少年に対して余裕の様相だった。 「今は特に――大きな脅威では無いようですね」  少年は、ジパングで最強レベルの侍に剣を習うも、なかなか上達してくれない。他には勘の良さ以外、命を削るくらいしか特技がない。なのであっさり、弱小者だと護衛は見切ったようだった。  そしてそんな護衛について、一番先にそれに気が付いたのは、観察力も高い聡明な子供だった。 「……あれ? ……アラス君?」 「――?」  瞬時に子供の方を見る護衛に、護衛が無表情のまま振り返る。  兄弟子も不思議そうに弟を見る。 「どうしたんだ? 悠夜」 「髪の色はアラス君より薄いし……しかも長いけど。まるで、アラス君が女の人になったみたいな姿の、護衛さんだなって……」 「……私の現在の主を、知っているのですか」  護衛はあっさり、子供が出した名と、自らの関連を口にする。そこで、場所を変えましょう、と。殺伐とした裏路地を見回してから、口にしたのだった。  何故か、護衛の奢りということで、子供達一行と芸人一座の花形は、付近の茶店に入って腰を落ち着けていた。 「やっぱり……イーレンが買ってたあの剣と、そっくり」 「……」  店に入る前に、剣を抜いていた少年から、黒髪の花形は食いつくように借りていた。丹念に剣を眺めた後で、怪訝な顔で少年に返し、店に入ってからずっと、対面に座る少年を見つめていた。  一方で。護衛を囲むように席に着いた子供達は、遠慮なく、護衛の姿を多方向から見つめる。 「本当ね……よく見ればアラス君そのものな顔じゃない」 「だな。髪型とか服が違うと、印象も変わるものなんだな」  彼らの父の知り合いという、自称「死神」。そっくりらしい青年を思い、面白そうに頷き合うのだった。 「そうでしょうね。この躯体は、そう造られた人形ですから」  冷静な護衛は、やはり事も無げに断言する。その台詞に、公家の方の子供達が飛び上がることとなった。
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