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時間がもったいない、と、茶店に誘いながら護衛は、あっさり本題を切り出していた。
「もしもその剣が精妖刃の物と同じなら。何故貴方がその剣を持っているか、霖は気になるそうです」
黙って成り行きを見守りつつ、御所の子供陣も顔を見合わせる。
その妖精は死んだ。そのことを隠したい様子だった少年が、何故そうするのか、どう対応するつもりか……周囲の方がハラハラしている。
「霖の目には、似た剣であることしかわからないようです。座の目利きの者に鑑定を願いたいと言うので、同行してもらうか、剣を貸してもらうことはできませんか?」
「――貸すのは、絶対に無理」
少年は即答する。店で出された水一つにも手を出さず、露骨に困る、不服な顔を作り護衛を見返す。
そして、今度はまっすぐ表情を消して、花形を見る。
「……剣がもし同じだったら……それで何になるんだ?」
「……――」
それもそうか、と。御所の子供陣も、その違和感に気が付いていた。
「そうよね。ユーオンがどうしてその剣を手に入れたのか……それを真っ先に訊けば早いのに」
護衛はそうしたのに、何故花形はそうしないのか。そして、慣れない袴を着用してまで常に剣を手放さない少年の警戒も、そこで納得のいった子供陣だった。
「ユオンの剣が欲しいのか? あんた」
「……」
「妖精さんが何処に行ったかは、あまり興味は無いんですか?」
それが気になるのならば、同一の剣と確信してから、持ち主はどうしたのかと尋ねるのも回りくどい。剣に拘っていた花形に、揃って不審の目を子供陣が向けた。
「そうですね。霖の目的は、それであるように私も感じます」
駄目押しの護衛の一言に、黒髪の花形は、困ったように笑った。
「……そうね。イーレンは、帰ってくる気はないと思うから」
そうして花形が知っていることについて、簡単に話し、嘆息したのだった。
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