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「……――」 「わたくしはずっと、自らに『悪魔』を宿しながらも、地上に降りて主を探してきました。天には最早、『悪魔憑き』であるわたくしの居場所もありませんでした」  姫君に宿ったのは、そう強い力を持つ悪魔ではなかった。それで姫君は自らの意識も保っていられたらしい。  行動は唯一、悪魔と同じだった目的――主であり魔性の者を探すことが中心で、それ以外には何もできなかったという。 「……けれどアナタのおかげで。あくまでわたくしの意志で、今後は動くことができます」 「…………」  穏やかに笑って少年を見る。少年はそれでも、硬い表情を崩せない。 「今はもう……少し前に、天も滅びたとききます」  姫君は心なしか、少しだけ俯いた状態でそう呟いた。 「烏丸頼也殿にも同じ事情をお話しした所、そう伺いました。わたくしにはどうやら、帰る場所もないようなのです」 「……」  それで――と。姫君は、少年の元に来た目的を、ようやくそこで具体的に口にした。 「わたくしの悪魔を祓ってくれたアナタに、今後、わたくしの護衛をしていただくことはできないでしょうか?」 「絶対に嫌だ」  即答。としか言えない脊髄反射で、少年は初めて言葉を発する。 「……あんたに護衛なんて、必要ないだろ」  胸を斬られても生きている姫君への、皮肉か何なのか。 「オレは確実に――あんたより弱いよ」  むしろ自身への嘲笑なのか。半ば歪んだ口に、引きつりそうな笑みを少年は僅かに浮かべたのだった。 +++++
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