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「ユーオン君、こんにちはー! 遊びに行こー!」 「……はぇ?」  それでなくても疲れていた中、不穏な出来事があった夜の翌日。寝不足で冴えない声を出した少年の所へ、朝一番から訪ねてきた明るい声があった。 「蒼ちゃん達にきいたよ! ユーオン君、『レスト』のヒトと知り合いなんだって?」 「……おはよう、クヌギ……」  寝ぼけ眼で何とか布団を畳みつつ、ようやく慣れてきた袴の帯を締める。そのまま剣を腰に装着した少年の居室へ入ってきたのは、御所の子供達の仲良し組である街の友人だった。  正確には、蒼潤や悠夜の義理の従兄弟だという。白金の短髪に深型の帽子の似合う美少年は、ジパングではあまり見ない襟のある上着と、繊維の荒い柄の下衣を自然に着こなしている。 「『レスト』って何回も来てるけど、いつも滞在が短いから、僕も見たことなかったんだ! でも今回は、長くいるんだって!」 「……そうなのか。やだな」  何で? と、帽子の友人が、紅い目をきらきらさせて少年を見る。 「花形の『咲姫』さん二人と話ができるなんて凄いじゃない! みんなで行こうよ、花形さんと知り合いになろうよ!」 「いや……知り合いの知り合いだっただけで、オレは別に……」  すっかり何かのスイッチが入っている友人。  何事かと、やがて少年の居室までやってきた他の子供陣に、助けを求めるような視線を向けた金色の髪の少年だった。  しかし数刻後。  昨日、その一座を観に行ったばかりのはずの他の子供陣まで、みんなで行こう、という方向に話が傾きかけていた。 「別に今日じゃなくてもいいけど。その内にどう?」  唯一、師の娘は、寝不足だった少年の顔色が悪いことに気が付いていた。それなら、と折衷案を提示してくれるが、それでも少年は難しい顔付きになる。 「別にオレがいなくても、あいつらは逃げないと思うけど」 「そんなぁ、寂しいこと言わないでよ、ユーオン君~」  自分以外の四人で行けば良い。少年はひたすら逃げ腰でいる。 「でもユオンがいないと、昨日の女、話はできなさそうだろ」 「話……って?」 「『ディアルス』のお話だよ。千族のヒトを受け入れる国って、霖さんは言ってたよね?」  公家の子供の二人は何故か、その大国について、花形の女から聞いてみたい様子だった。 「『ディアルス』なら……オレも行ったことあるけど」 「――え?」  あっさりそう返した少年に、円形に坐していた子供陣が一斉に注目する。
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