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「基本は人間の国だって言うけど、そんな珠玉があるせいか、王家は人間だけど魔法を使うって言うし。だから、千族とかの化け物には凄く理解があって……共存を目指してるんだって、うちの化け物の奴らも言ってた」 「それで昨日のあの女は、ユオンにディアルスに来ないかって言ったのか?」 「だとは思うけど……でも、ディアルスのそういうやり方は、西の大陸の余所の地方からは『千族狩り』だって言われてる」 「千族狩りって――何よ?」  声を発した師の娘だけでなく、他の子供も眉を顰める。 「西の大陸は、本当に人間の多い所っていうから。ディアルス以外の奴らは千族のことはほとんど理解できないし、基本、怖がってるみたいなんだ」  そんな中で、最早かなり個体数が減ってきている千族を集め、戸籍を与える国がディアルスだ。それにより国力を強化しようとしていると、周辺地域からは警戒視されているのが現状だった。 「無理強いはしてないって言うけど。化け物の方も、いきなりディアルスに来ないかって言われても、びっくりして警戒することの方が多いって言うし」 「それは……まぁ、ありそうだな」  少年の養父母も、元は完全に、ディアルス王家の者と偶然に知り合ったらしい。そうしたことでもなければ、見知らぬ人間の国で戸籍を貰うなどとは、思ってもみない展開だった。 「実際、どれくらい強い奴がいるんだ? その国は」 「どうだろ。ゲンジとヨリヤが相当強いから、それほどじゃないけど、でも強い奴らは……沢山いるとは思うけど」  それは基本的に、この世界の「宝」を持っている者達と比較すること自体が間違いでもある。薄々少年はそれを感じつつも、わかりやすく伝えるなら、そうとしか言えなかった。  それだけ強いと評される親に、師の娘は首を傾げる。 「ユーオンから見たら……そのディアルスは、千族にとって、実際どんな感じだったの?」 「うーん……オレもちょっとの間しかいなかったから、何とも言えないけど……」  考え込む少年の様子に、何故か師の娘は複雑な目を向けていた。 「国全体ではやっぱり、人間と化け物の揉め事が、どうしてもありそうだけど……」  それでも――と。少年は気負いなき声色で、その先を口にした。 「王家のヒトに、直接に会ったことはないけど。色んなとこで、話を聞いてたら……いい国なのかなって、何となく思ったよ」  そうなんだ。と、思い思いの表情で子供達は頷く。
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